旬を愛でる花旅・庭めぐりとは…毎週水曜日は、ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが“今が旬”の花の名所情報をお届け。今回はサクラよりひと足早く咲き出すマグノリアを集めたガーデンをご紹介します。
旬を愛でる花旅・庭めぐり(26)
ふくよかに咲くマグノリアに春を感じて〜東京・京王フローラルガーデン アンジェ
白花のモクレンの中でも花が大きく豪華な印象のハクモクレン。春の空気にすがずがしい白がよく似合う。サクラより一足早く春の到来を知らせる花木とは?
「マグノリアってどんな花?」と考えこまないでくださいね。モクレン、コブシ、オオヤマレンゲ、タイサンボクなど、モクレン科モクレン属の仲間の総称がマグノリアです。
なかでもいちばん開花が早く3月中旬から咲き出すのがモクレン、そして3月下旬に咲き出すのがコブシです。
モクレンやコブシは古くから庭木として親しまれ、現在でもシンボルツリーとして人気が高い花木です。管理しやすいため、欧米でも人気があるのですが、欧米での呼び名は「マグノリア」だということを覚えておいてください。
モクレンはサクラよりひと足早く開花し、本格的な春の到来を告げる花です。
その魅力はやはり、ふくよかな花姿
もちろんサクラも好きですが、私はむしろモクレンのほうに魅力を感じます。どこがよいのか、それはやはりあのふくよかな花姿だと思います。
春の青空を背景に、白いモクレンの大きなつぼみが膨らみかけている様子を見かけると、思わず立ち止まってしばし眺めずにはいられません。
シモクレンとハクモクレンの交配種、サラサモクレンは、ピンクの濃淡がとてもエレガント。枝が見えないほどにたわわに咲く姿が華やか。すっと尖った先端を南上に向け、まるでいっせいに空を指さしているような光景を見ているうちに、なぜか心が穏やかになってきます。
悲しいことやイラっとすること、焦る気持ちなどがあったとしても、その景色を見ているうちに、いつもおおらかな気持ちになり、「がんばろう!」と再び元気よく歩き出すことができるのです。
さまざまな品種を集めた、全国でも珍しいガーデン
さて、住宅街でもよく見かけるモクレン、コブシですが、じつは種類が豊富にあります。モクレンやコブシを含めたマグノリアのさまざまな品種を集めた、全国でも珍しいガーデンが、東京・調布市にあるのをご存じでしょうか。
モクレンとコブシの両方が満開を迎える時期、ガーデンは祝福を受けたような美しい光景に。その中を歩いていると徐々に幸福感に満たされてくる。サクラとは異なる、マグノリアが描く春の景色がある
京王相模原線の「京王多摩川駅」の改札を出るとすぐ、という好アクセスにあるのが「京王フローラルガーデン アンジェ」です。
かつてはハナショウブの名所として知られた「京王百花苑」が、2002年に欧風ガーデンとしてリニューアル。リニューアルに際し、庭の個性を打ち出すために選ばれた花木が、マグノリアでした。
なぜマグノリアが選ばれたのでしょうか
以前、この庭の支配人に「なぜマグノリアだったのでしょうか」とお伺いしたことがあります。
モクレンやコブシは日本人に古くから親しまれたなじみの深い花木であること、いろいろな品種があることは広く知られていないけれども、個人宅の花木としてさらに人気が高まる要素があること、というのが大きな理由でした。
「でもね、いちばん大きな理由は、サクラより先に満開になることじゃないですかね。サクラと同時期に咲いて、サクラの名所とライバルになるのは避けたかったのかもしれませんね」。
たしかにサクラの名所は日本中にたくさんありますが、モクレンの名所というのは聞いたことがないような……。
マグノリアが200本も植えられている庭
さて、「京王フローラルガーデン アンジェ」には、モクレン、コブシを含めたマグノリアがなんと30種200本も植えられています。
リニューアルオープンから年月が経ち、どの木も成長して枝張りが立派になっています。見頃を迎えるのは3月下旬から4月中旬にかけて。枝を覆い尽くすように白や紫、ピンクの花が咲き誇ります。
見上げれば満開のマグノリア、そしてその足元にはスイセンやチューリップなど春の球根花やパンジー、ビオラが群れ咲いて、華やかな季節の始まりを美しく描き出しています。