病理検査で組織を調べてがんであることを確定する
こうして、がんの存在を肉眼や画像で確かめた後に行われるのががんであることを確定する検査です。
この方法には体内からがんの細胞や組織を採取し、良性か悪性かを含め、その性質を顕微鏡で詳しく観察する病理検査を用います。
この検査結果にもとづく病理診断は各診療科の担当医ではなく病理医と呼ばれる専門家が行います。
内視鏡検査の際、疑わしい病変があればそこから細胞や組織を採取してくるのが一般的です。子宮頸がんは検診ですでに細胞診(病理検査の一種)を行っていますが、疑わしいときはコルポスコピー(膣拡大鏡診)でさらに大きい組織を採取してきます。
肺がんの場合も内視鏡検査の一種である気管支鏡検査で組織を採取しますが、気管支鏡が届かない場所に病変があるときは皮膚の表面から肺に直接針を刺して組織を採取する針生検と呼ばれる方法が行われます。乳がんも同様に針生検で組織を採取します。
「病理検査では、組織採取の部位が病変のある場所からずれてしまうと、ときに正しい診断を得られないことがあります。特に画像検査でがんの疑いが強い場合は病理検査で異常なしの診断が出ても安心できないのです」と小林先生は注意を促します。その場合は、時間を空けずに病理検査をやり直すこともあります。
病理検査にかぎらず、がんの診断においては特定の検査だけを信頼せず、さまざまな診療情報をもとに総合的に判断することが重要だと小林先生は強調します。
一方で、早期に発見しづらく進行スピードの速い膵臓がんは、病理検査でがんが確定できなくても画像検査でその可能性が高ければ早期に手術を行うこともあるといいます。
「がんの種類によって検査にかけられる時間は違ってくるのです」
【がんの診断で行われる主な検査】
がんの確定・性質を調べる〔病理検査〕病理検査とは体の一部から採取した細胞や病変の一部を薄く切り出した組織を顕微鏡で観察することによってがんかどうかを確定したり、がんの性質を調べて適切な治療選択に役立てたりします。細胞診検査、針生検、組織診検査などいろいろな種類があります。
がんの確認・広がりを調べる〔画像検査〕画像検査にはⅩ線(レントゲン)検査、CT検査、MRI検査、PET検査、超音波検査などいろいろな種類があります。これらの検査によって撮影された画像からがんの有無を確認したり、がんの広がり(リンパ節やほかの臓器への転移)などを調べたりします。
【知っておきたい 5大がんの診断で行われる検査】
●がんの疑いから診断・治療方針を決めるまでの検査の流れ(1)〜(4)の流れで検査が行われます。
【胃がん】(1)問診・診察
(2)胃内視鏡検査
(3)病理検査
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)
【大腸がん】(1)問診・診察
(2)大腸内視鏡検査、大腸CT検査、カプセル内視鏡検査
(3)病理検査
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)
【肺がん】(1)問診・診察
(2)胸部CT検査、気管支鏡検査
(3)病理検査(一部針生検)
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)
【乳がん】(1)問診・診察
(2)マンモグラフィー検査、超音波検査
(3)病理検査(針生検)
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)
【子宮頸がん】(1)問診・診察
(2)細胞診、コルポスコープ診
(3)病理検査
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)
※国立がん研究センターがん情報サービスおよび小林先生への取材をもとに作成 イラスト/にれいさちこ 取材・文/渡辺千鶴
『家庭画報』2023年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。