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知っておきたい、がんの疑いから診断・治療方針を決めるまでの検査の流れ

2023.05.12

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病理検査で組織を調べてがんであることを確定する


こうして、がんの存在を肉眼や画像で確かめた後に行われるのががんであることを確定する検査です。

この方法には体内からがんの細胞や組織を採取し、良性か悪性かを含め、その性質を顕微鏡で詳しく観察する病理検査を用います。

この検査結果にもとづく病理診断は各診療科の担当医ではなく病理医と呼ばれる専門家が行います。


内視鏡検査の際、疑わしい病変があればそこから細胞や組織を採取してくるのが一般的です。子宮頸がんは検診ですでに細胞診(病理検査の一種)を行っていますが、疑わしいときはコルポスコピー(膣拡大鏡診)でさらに大きい組織を採取してきます。

肺がんの場合も内視鏡検査の一種である気管支鏡検査で組織を採取しますが、気管支鏡が届かない場所に病変があるときは皮膚の表面から肺に直接針を刺して組織を採取する針生検と呼ばれる方法が行われます。乳がんも同様に針生検で組織を採取します。

「病理検査では、組織採取の部位が病変のある場所からずれてしまうと、ときに正しい診断を得られないことがあります。特に画像検査でがんの疑いが強い場合は病理検査で異常なしの診断が出ても安心できないのです」と小林先生は注意を促します。その場合は、時間を空けずに病理検査をやり直すこともあります。

病理検査にかぎらず、がんの診断においては特定の検査だけを信頼せず、さまざまな診療情報をもとに総合的に判断することが重要だと小林先生は強調します。

一方で、早期に発見しづらく進行スピードの速い膵臓がんは、病理検査でがんが確定できなくても画像検査でその可能性が高ければ早期に手術を行うこともあるといいます。

「がんの種類によって検査にかけられる時間は違ってくるのです」



【がんの診断で行われる主な検査】


がんの確定・性質を調べる〔病理検査〕
病理検査

病理検査とは体の一部から採取した細胞や病変の一部を薄く切り出した組織を顕微鏡で観察することによってがんかどうかを確定したり、がんの性質を調べて適切な治療選択に役立てたりします。細胞診検査、針生検、組織診検査などいろいろな種類があります。

がんの確認・広がりを調べる〔画像検査〕
画像検査

画像検査にはⅩ線(レントゲン)検査、CT検査、MRI検査、PET検査、超音波検査などいろいろな種類があります。これらの検査によって撮影された画像からがんの有無を確認したり、がんの広がり(リンパ節やほかの臓器への転移)などを調べたりします。




【知っておきたい 5大がんの診断で行われる検査】


●がんの疑いから診断・治療方針を決めるまでの検査の流れ

過程と目的

(1)〜(4)の流れで検査が行われます。

【胃がん】
(1)問診・診察
(2)胃内視鏡検査
(3)病理検査
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)

【大腸がん】
(1)問診・診察
(2)大腸内視鏡検査、大腸CT検査、カプセル内視鏡検査
(3)病理検査
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)

【肺がん】
(1)問診・診察
(2)胸部CT検査、気管支鏡検査
(3)病理検査(一部針生検)
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)

【乳がん】
(1)問診・診察
(2)マンモグラフィー検査、超音波検査
(3)病理検査(針生検)
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)

【子宮頸がん】
(1)問診・診察
(2)細胞診、コルポスコープ診
(3)病理検査
(4)造影CT検査、MRI検査・(PET検査)

※国立がん研究センターがん情報サービスおよび小林先生への取材をもとに作成



がんまるごと大百科

1「女性の2人に1人はがんにかかる時代です」
1−1 2人に1人はがんにかかる時代、正しい情報を知りましょう
1−2 男性よりひと足早く、30歳過ぎから増える女性のがん患者。その理由は?
1−3 早期発見なら多くのがんは助かる病気。かかることを想定してリスクに備えましょう

2「5つの健康習慣を実践してがんをできるだけ予防する」
2−1 女性のがん要因として最も多いのは「感染」。がん予防につながる5つの健康習慣とは
2−2 がん予防にはまず禁煙や節酒を! 嗜好品の摂り方をチェックしましょう
2−3 がんのリスクが約4割下がる5つの健康習慣。運動を欠かさず、適正体重を保ちましょう

3「早期発見に役立つ根拠のある検診を受ける」
3−1 がん検診を正しく利用してがんによる死亡リスクを減らす
3−2 目的はがんを早期に発見し適切な治療をすることでがんによる死亡を減らすこと
3−3 国が推奨する検診を基本に自分のがんリスクに応じた検診を賢く選んで受ける

4「納得できる治療のために病院選びのポイントを知る」
4−1 自分のがんの状態について把握するのが第一歩
4−2 医療体制だけでなく、生活支援や地域連携、情報公開も選択のポイント
4−3 がん診療連携拠点病院等では医療・生活支援体制が整っている

5「診断や治療選択に欠かせない検査の重要性を理解する」
5−1 どのような目的のもと、どんな精密検査が行われるのか理解する
5−2 特定の検査だけを信頼せず、さまざまな診療情報をもとに総合的に診断していく
5−3 がんの広がりを調べることで決まってくる「病期」は治療選択の際の重要な目安に(5/15公開予定)
イラスト/にれいさちこ 取材・文/渡辺千鶴

『家庭画報』2023年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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