クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第143回 ヨーゼフ・シュトラウス ワルツ『天体の音楽』
イラスト/なめきみほ
蛙の子は蛙だということが証明された名曲とは
今日1月21日はヨーゼフ・シュトラウス(1827~70)のワルツ『天体の音楽』の初演日です。
『ラデツキー行進曲』で名高い父ヨハン・シュトラウス1世や、“ワルツ王”と呼ばれる兄ヨハン・シュトラウス2世とは異なり、音楽とはまったく縁のない工学技師の道を歩んでいたのが、ウィーンの音楽一家シュトラウス家の次男坊ヨーゼフ・シュトラウスでした。
しかし運命とはわからないものです。病に倒れた兄シュトラウス2世の代役として指揮を務めたことをきっかけに、急速に音楽の世界に入り込んだヨーゼフは、その才能をいかんなく発揮します。
1853年に音楽家となってから、亡くなるまでの約17年間に残した作品は約300曲。その代表作が、父や兄の輝かしい伝統を受け継いだワルツの名曲『天体の音楽』です。この素敵なタイトルの音楽が初めて披露されたのは、毎年1月末に開催されてきたウィーン大学医学生の舞踏会でした。1868年の舞踏会のテーマ「天体の音楽」にのっとった幻想的でロマンチックなワルツは、ウィーンの若者たちを魅了したと伝えられています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。