今月の著者:栗山英樹さん
2023年3月22日(日本時間)。日本とアメリカで行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の決勝戦。1年以上過ぎた今も、感動と興奮を覚えている方が多いのではないでしょうか。
1点リードで迎えた9回、満を持して大谷翔平選手が登板。当時、大リーグのロサンゼルス・エンゼルスでチームメイトだったトラウト選手と魂の勝負を繰り広げ、空振り三振に打ち取りました。
3対2で、3大会ぶり3回目の優勝を飾った侍ジャパンを振り返り、「北海道日本ハムファイターズでの10年、日本代表として2年、計12年間の監督生活で、ここまで描いた絵のとおりなのは初めての経験でした」と栗山英樹さんは語ります。
2022年、日本代表監督に就任し、チームを世界一へと導いた名将が、人生論を踏まえてWBC優勝後に書き下ろしたのが、『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』。
「僕は、野球選手としては本当にダメだった人間なんです。甲子園にも出ていないし、大学野球で活躍したわけでもない。プロ野球には、プロテストを受けてドラフト外での入団でした。入団2年目からメニエール病とも闘わなければならなかった。ゴールデン・グラブ賞を受賞したこともありますが、特別な記録を残したわけではありません。
でも1990年に現役を引退後、20年以上プロ野球の現場から離れ、コーチも未経験だった僕に、北海道日本ハムファイターズの監督という大役が委ねられました。さらには侍ジャパンという日本代表監督まで任され、世界一になることができた。ダメだった人間が、なぜ人生最高の瞬間をアメリカの地で迎えられたのか。やはり好きなことを信じ、選手たちのことを心から信じて戦い続けたからこそ、運を引き寄せられたのではないかと思うのです」
常に謙虚で学びを忘れず、相手のためを思って行動し、信じ切る栗山さん。本書に書かれた大谷翔平選手や村上宗隆選手たちとの興味深いエピソードを読むと、運を引き寄せる生き方を体現している栗山さんが率いた侍ジャパンの優勝は、決して奇跡ではなく必然だったのだとわかります。
“寸暇を惜しんで本を読む”、“言葉を書いて貼る”、“ノートに書く”、“挨拶負けをしない”......。本のタイトルどおり、運を自分自身でコントロールできるようになるために、日頃実践されているルーティンやさまざまな思いが、余すところなく綴られています。
「自分のルーティンをここまで明かしたのは初めてです」と笑う栗山さんに、長年かけて体得されてきた心がけを今、本にしたためた意図をお尋ねすると、「人生は何が起きるかわかりません。でも、幸せだと感じられる生き方になるかどうかは自分次第。利他の心で相手を信じ、生きていれば、運が自分に味方してくれることもあるのではないかと思うのです。真に信ずれば知恵は生まれる。僕の経験が誰かの心に響き、生きるうえで役に立ってくれたら嬉しい、そんな思いで書き綴ってみました」。
栗山さんが実践する心がけを少しずつでも取り入れられたら、きっと人生が変わっていくはずです。
『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』栗山英樹 著 講談社WBC優勝までの半生を振り返り、書き下ろした一冊。北海道日本ハムファイターズの監督、日本代表監督を務めた経験から到達した「人を信じて、心の底から信じ抜いて共に前に進むことが、どれだけ己の心の中に穏やかさ、嬉しさ、喜びを与えてくれることか」という境地を軸に、自身が実践する運を引き寄せるための心がけを紹介。
栗山英樹(くりやま・ひでき)1961年東京都生まれ。北海道日本ハムファイターズ最高責任者であるチーフ・ベースボール・オフィサー。野球指導者。元プロ野球選手。北海学園特任教授。著書に『栗山ノート2 世界一への軌跡』など多数。
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