亡くなった方の魂が宿る依り代とされ、その方自身の象徴であるお位牌(いはい)。そんなお位牌を通して故人に語りかけることは、弔いになるとともに、家族の癒やしにもつながります。核家族化が進み、仏間のない家が増えている今、お位牌とのかかわり方を見直してみませんか。
◆Index
・お位牌に関する相談はここへ。「厨子屋 銀座本店」新規オープン↓
家庭から仏間が少なくなり、リビングやダイニングに仏壇を置く家が増えることで仏壇には家具のようなデザインが求められるようになりました。また、仏壇の原型でもあり、日本に古くからある大切なものを納める箱「厨子」を選ぶ家庭も多くなっており、お位牌へのニーズも多様に変化しています。
1900年の創業以来、会津若松で仏壇・仏具・お位牌の製造販売を一貫して手がける、「厨子屋 銀座本店」の運営元「アルテマイスター」では、徐々に変化する時代に先駆けるように、約30年前から色味や素材などにこだわったデザイン性の高いお位牌づくりを行っています。
宝石を用いたもの、伝統的な意匠をモダンに昇華させたもの、作家とコラボレーションしたもの等々。見た目はもちろん、素材やサイズなど豊富なバリエーションの中から、故人の雰囲気に合う一品を選ぶことができます。そうして選んだお位牌を身近なところに置けば、亡くなった方との絆がより深まることでしょう。
シンプルな厨子の中に安置して
琥珀を贅沢に使ったお位牌が、リビングに品格をもたらす。
お気に入りの帛紗(ふくさ)の上に
お位牌と静かに向き合える寝室は、 置き場所としておすすめ。
・「厨子屋」公式サイトで自分のライフスタイルに合った祈りの形を探す→
藤野征一郎さん(漆工芸家)
金沢市から車で北上すること約20分。豊かな自然に恵まれた海辺の小さな町に、漆工芸家、藤野征一郎さんの自宅兼工房があります。
工房内にあるのは、製作途中の作品の数々。木地をつくり、和紙を貼り、下地づくりを行った後に漆を塗り重ね、さらに研ぎ出しと装飾の工程を経て完成する藤野さんの作品。すべて手作業で仕上げられる漆工芸品は、漆ならではの奥行きのある質感を通じて、見る者に静けさと躍動感の両方を感じさせます。そんな藤野さんが目下、取り組んでいるのがお位牌や厨子といった祈りの道具づくり。
「数年前からのテーマだったお位牌の製作を、今、集中的に行っています」。
なかでも注力しているのが、亡くなった方の戒名などを記した札板を複数入れることのできる“回出(くりだし)位牌”だといいます。
「本来は、すでにある複数のお位牌をまとめるのが回出位牌ですが、製作する中で、逆にゼロの状態から順番に納めていくものがあってもいいのではないかと思い至りました」。
従来の限定した用途ではなく、転用の利くものを。そんな発想から生まれたのが、厨子としても使える回出位牌「蓮」(下写真)新しい祈りのかたちを提案する藤野さんの新作は、2024年12月「厨子屋 銀座本店」にてお目見えします。
手仕事から誕生した厨子にもなる回出(くりだし)位牌
撮影/本誌・坂本正行、 大泉省吾 スタイリング/横瀬多美保 取材・文/冨部志保子