名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
連載一覧はこちら>>
大西(おおにし)
「大西」は全国順位97位というメジャーな名字です。「
佐野」「
木下」「杉本」などと同じくらいなのですが、「大西」には他とは違った特徴があります。それは、香川県では県で一番多い名字となっていることです。
都道府県単位で一番多い名字は、「
佐藤」「
鈴木」「
高橋」「
山本」「
田中」「
伊藤」「
小林」といった、名字ランキングで10位以内に入るものがほとんどで、「大西」のように100位近い名字が県単位で1位になることはほぼありません。他には宮崎県の「黒木」と、沖縄県の「比嘉」だけなのです。
本来「大西」は方位由来の名字で、各地にあります。しかし、方位由来の名字がこれだけ集中しているには他の理由もあるはずです。
「大西」は香川県で最多であるだけではなく、徳島県で8位、愛媛県でも15位となっている他、高知県にも多く、四国に極めて多い名字といえます。
四国のほぼ中央に、阿波国三好郡大西(現在の徳島県三好市池田町)という地名があります。ここに鎌倉時代に公家西園寺家から派遣された荘官の末裔という大西氏があり、白地城に拠って戦国時代には土佐北部から讃岐国豊田郡、伊予国東部にまで勢力を広げていました。
現在でも、香川県西部、愛媛県東部、徳島県西部一帯に激しく集中しており、徳島県三好市や香川県三豊市・まんのう町などでは、一番多い名字が「大西」であるなど、この大西一族の末裔が広がったことを示しています。
なお、四国の他には関西にも多く、兵庫県で16位、奈良県で21位となっています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
墨アート製作 書家・越智まみ(
https://esprit-de-mami.com/)
セブンアカデミーで越智まみさんの「オンライン書道」墨アートレッスンが開催中。詳細は
こちらから>>