映画『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)では悪徳刑事を演じ、第86回キネマ旬報ベスト・テン助演男優賞を受賞した。 ――作品の魅力については、どう感じていらっしゃいますか?
「まず、題名にもなっているヘッダ・ガブラーという役が、とても魅力的ですね。男を惑わす女ですから(笑)。将軍の娘としてさんざん贅沢をしてきた人で、自由奔放で我が儘で、人生に退屈している。でも、プライドが高いゆえに保守的なところがあって……。そんなヘッダの心の闇みたいなものまで、しのぶちゃんが素敵に表現してくれると思うので、僕はそのダンナ役を楽しもうと思ってます。栗山さんは戯曲を細かく分析して、それを噛み砕いて目指す方向を示してくれるので、すっかり頼りにしています」
――ご自身が演じるイェルゲンという役についてはどうでしょう?
「素直で表裏がない、とてもいい人。でも、世間やヘッダからすれば、退屈でつまらない男でしょうね。実は僕はあまりこういう役をやったことがないんですが、プロデューサーの北村(明子)さんが声をかけてくれたからには、通じるものがあるんでしょう。自分でも、僕に似ているなと感じますよ(笑)。きっとヘッダは、この男だったら経済的に安定してそうだし、自分の思い通りになると思ったんだろうな」
――劇団「オンシアター自由劇場」を経て、現在は映像作品を中心に活動されている小日向さん。ご自身にとって舞台はどういう存在ですか?
「口の悪い役者仲間は、『コヒさんは舞台が嫌いなんだよね』とか『あいつは映像に魂を売った!』とか言ってますけど(笑)、そんなことは全然ないです。ただ、舞台=ストレスが多いのは確かですね。劇団の解散以降、舞台がすっかり怖くなってしまって。それで自然に、仕事の比重が映像のほうに傾いていったんです。19年間舞台の世界にいた僕にとって、映像の世界はとても新鮮なものでしたし、舞台は本当にキツいですから」