「きものや帯、小物に、さりげなく 家にゆかりの紋や季節感を」
――今年2月に歌舞伎座で開催された『延寿會』で、お父様の清元延寿太夫さんの前名である「清元栄寿太夫」を七代目として襲名披露した尾上右近さん。これからは、歌舞伎役者と、清元の後継者としての、二つの道を歩むことになります。
右近「誰もやったことのない大変なことに挑戦するのが好きなんです(笑)。家業である清元については何らかの形で携わっていくべきと稽古はして来ましたが、役者を続けながらの襲名を許していただけたことには感謝しかありません。歌舞伎の本公演でひと月の間、清元としてお客様の前で唄う日を迎えられるかどうかは、これからの僕次第だと思っています」。
写真は、清元栄寿太夫襲名披露の際に誂えた扇子と手拭い。「お扇子は、清元の紋である花びょうたんと、七代目清元栄寿太夫の“七”代目にちなんで七つ星をあしらわせていただきました。手拭いは、父が延寿太夫を襲名した際の手拭いをうつさせていただきました。配色のバランスがとても好きです」と、右近さん。
こちらは、お父様の清元延寿太夫さんがご挨拶の品として誂えた、延寿會の記念品のお箸。清元の紋の由来である瓢箪と、會の日付が入っています。右近さんのお母様である、清元延寿太夫夫人の岡村矢尋さんに、帯ときものを見せていただきました。
右近さんの曾祖父にあたる六代目尾上菊五郎丈の未亡人であった寺島千代さんから、代々受け継がれてきた帯。「その昔、曾祖母の千代さんが “これからお客様にお目にかかってきます”と、おめかしをして指輪をつけて出かけようとしたら、六代目に“着替えてから行きなさい”とたしなめられたという話を聞いたことがあります。役者の女房はお客様より出過ぎないよう、控えめに……ということなのでしょう。そんな教えが伝わっているからでしょうか、母のきものも、色味を抑えた地味なものが多い気がします」と、右近さん。
こちらは、お母様が3月から4月にかけて劇場などに出かける時に着る、桜のきもの。「着られる時期はわずかですが、この季節ならではの色々な思い出があります」と、矢尋さん。新しい春、私たちも花のきものを纏って、松竹座で、尾上右近さんの活躍に声援を送りたいですね。
大阪松竹座 スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」
出演:市川猿之助、 市川右團次、坂東巳之助、中村隼人、尾上右近、坂東新悟、市川寿猿、市川弘太郎、坂東竹三郎、市川笑三郎、市川猿弥、市川笑也、市川男女蔵、市川門之助/平岳大、下村青、嘉島典俊、浅野和之
2018年4月1日(日)~25日(水)
昼の部11時開演 夜の部16時30分開演
【お問い合わせ】
チケットホン松竹 TEL:0570-000-489
チケットweb松竹 URL:
http://www.ticket-web-shochiku.com 撮影/久保田彩子 構成・文/清水井朋子