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前回まで)理想の里山を手に入れるため農家になる決意をした今森さん。子どものころ、当たり前にあった自然の姿、その原風景を求め、今森光彦さんは今日も、失われつつある里山を取り戻すための活動に勤しみます。
今森光彦 環境農家への道 第7回
私が子どもだったころ
(文・切り絵/今森光彦)
銀色の微毛に包まれていたコナラの芽が少しずつ膨らんで、日に日に黄緑色の葉のかたちが見えてくる。こんなころ、コジュケイの鳴き声に誘われて、庭の雑木林へ足を向けると、衣服や肌までもが若葉色に染まってきて、別世界に入りこんでしまったような気持ちになる。
山々が青々とするころ、毎年のように思い出すのが、子ども時代のことだ。あのころは、琵琶湖の辺りに、満ち足りた環境が残っていた。私の自宅は、大津の旧家だった。
庭で休んでいたイノシシのうり坊。そっと近づくと、なんとも可愛らしい顔をしていることがわかる。近くに親がいないので、はぐれてしまったのだろうか。