大津の街は、まさに小京都と言うにふさわしく、町家造りの家々がひしめいていた。自宅から10分くらい歩くと、あらゆるものが手に入る商店街のにぎわいがあったし、夕刻になると、灯りのついた障子戸の向こうで三味線の音が聞こえ、着物姿の芸者さんが行き来していた。
はなし言葉も風習も京都とほとんど同じ。いやそれどころか、自然と文化が調和した街という意味では、京都以上に日本らしいところだったように思う。
私は、そんな街なかに住んでいたけれど、救われたのは、子どもが歩いて行ける距離に、琵琶湖があり、田んぼや小川などもたくさんあったことだ。自然が好きな私は、仲間たちと、毎日のようにフィールドに出て駆け巡った。
(「今森光彦 環境農家への道 第8回」に続く。5月14日更新予定。)
オーレリアンの庭では、バラは昆虫たちのためにある。葉を食べるオトシブミや、茎に産卵するハバチも大歓迎。完全無農薬なので、花の付き方がいまひとつ、という場合も多々あるけれど、いたしかたない。一重のオールドローズとアカタテハをあしらった切り絵をつくってみた。鮮やかな色のコントラストは、初夏の緑のなかでよく似合う。実際にはこの蝶は、バラの花に来ることはないのだけれど、両者の組み合わせは、切り絵ならではの世界だ。切り絵のサイズ108×78㌢。 今森光彦
1954年滋賀県生まれ。写真家。 切り絵作家。
第20回木村伊兵衛写真賞、第28回土門拳賞などを受賞。著書に『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社)、『今森光彦ペーパーカットアート おとなの切り紙』(山と溪谷社)ほか。
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