中学時代に骨肉腫が見つかり、これまで6回の手術を経験
林 祐樹さん(31歳)は、堺市立総合医療センター・放射線技術科に所属する診療放射線技師です。14歳のときに左肩に骨肉腫が見つかって以来、これまでに手術を6回受けています。
執刀したのはいずれも、現在、生長会府中病院副院長・整形外科部長を務める家口 尚医師で、すでに17年のつきあいになっています。
骨肉腫の標準的な治療法は、手術で腫瘍を取り除き、術後に抗がん剤治療を行うことです。手術前に抗がん剤治療を行って腫瘍を小さくし、全身の腫瘍細胞をたたく術前化学療法も一般的です。
また、手術では骨肉腫を切除して欠損した部分に自分の骨を移植したり、腫瘍用の人工関節を入れたりすることがよく行われます。
林さんも最初に腫瘍が発見されてすぐの2001年に、手術とその前後で抗がん剤治療を受け、その後、10か月入院しました。ところが退院後3か月で今度は左大腿骨に骨肉腫が見つかり、同じく10か月の入院で治療しました。
いずれも手術では、切除した骨をいったん体外に取り出し、放射線を大量に照射して腫瘍細胞を殺してから元の位置に戻して、金属の棒とねじで固定する方法が取られました。そのため、林さんの左上腕と左大腿の内部には、支えにする金属や骨を留める釘が残っています。
小児の骨肉腫は骨を伸ばす軟骨(成長軟骨)のそばにできやすく、思春期前に発症すると腫瘍の切除や抗がん剤治療によって骨の成長に影響が出ます。
「林さんの場合はすでに成長軟骨が閉じて骨の伸びが止まっていたので、左腕や左脚が極端に短くなることはありませんでした」と家口さん。
ただ、脚の手術をしたことによってしばらく松葉杖を使ったため、左上腕骨に負荷がかかって上腕骨頭がつぶされ、骨と金属を留めている釘がゆるむ事態が起きました。
そこで、林さんは2004四年に釘を抜去する手術を受け、さらに2005年にはすべての釘を抜いて人工骨頭に置換する手術を受けました。
2017年には、人工骨頭の周囲の皮膚が徐々に薄くなり、穿孔の恐れが出てきたため、感染の危険性も考慮して人工骨頭をはずします。同時に肩甲骨の一部を移植してプレートとスクリューで留め、上腕骨の長さの維持を図りました。
この1月には、前年の夏に旅行中に強打して骨折した左上腕骨の手術をする必要があり、自分の腸骨(骨盤の骨)の一部を移植して固定しました。肩と腰の両方を手術する、比較的大きな手術でした。
林さんはこのような病気と治療の影響で左肩を回したり、両手で重い物を持ったりすることができなくなりましたが、診療放射線技師としての日常の業務にはほぼ支障はありません。