フィギュアスケート愛(eye)とは……本誌『家庭画報』の「フィギュアスケート」特集を担当する、フリー編集者・ライターの小松庸子さんが独自の視点で取材の舞台裏や選手のトピックスなどを綴ります。
「Continues~with Wings~」初日公演より。サプライズで演技を披露してくれた羽生選手。会場のボルテージは最高潮に! 写真/坂本 清/アフロ平昌五輪での2連覇以降、日本中に沸き起こった羽生結弦選手フィーバー。春になっても収まる気配はありませんね!
オリンピック後も毎日のようにテレビやニュースで取り上げられてきた羽生選手。
この記念すべきオリンピックイヤーの、4月~5月に行われたアイスショーやイベントなどから、特に注目された出来事を追体験してみたいと思います。
凱旋公演「Continues~with Wings~」
まず、4月13日~15日に武蔵野の森スポーツプラザにて開催された「Continues~with Wings~」。
怪我でリハビリ中ではありますが、ずっと応援してくれてきたファンの皆さんの前でお礼を直接伝えたいという、羽生選手の熱い思いからこの凱旋公演は実現しました。
私が伺ったのは初日の公演。羽生選手はリハビリ中のためスケーティングでの出演はなしと事前に告知されていたものの、王者の帰還をその場で共に祝いたいと願うファンの皆さんで会場は超満員でした。
羽生選手自ら声をかけたというエフゲニー・プルシェンコさん、ジェフリー・バトルさん、シェイ=リーン・ボーンさん、ジョニー・ウィアーさん、川口悠子&アレキサンドル・スミルノフさん、無良崇人さん、佐野稔さんなどが出演。
この日スケジュールが合わなかったハビエル・フェルナンデス選手とステファン・ランビエールさんからはメッセージが流れていました。
すでにショーの詳細は報道されているので、ここでは特に私の心に響いた部分を書き記しておきたいと思います。
ところどころで羽生選手とスケーターが1対1で行うトークショーが挟まれる趣向だったのですが、羽生選手のインタビュアーぶりが圧巻でした。
質問の展開が非常に的確! いつもは聞かれる立場なのに、慌てず、動じない姿に本当に舌を巻きました。
特に印象的だったのは、ジョニー・ウィアーさんとの愛あるやりとりでしょうか。
「忙しくてもスケートをやりたいというモチベーションをくれるのはエフゲニア・メドベージェワとユヅル」と語るジョニーのコメントに嬉しそうな羽生選手。
羽生選手:「ジョニーさんにとって、フィギュアはスポーツですか、アートですか?」
ジョニー・ウィアーさん:「両方です」
フィギュア界きっての耽美派で愛の伝道師でもあるジョニーにとってフィギュアスケートとは?という認識を、羽生選手が知りたかったんだなということにとても興味を覚えました。
そして、なんとなんと!
ファイナルの前、最後の最後にサプライズで羽生選手が演技を披露。
「ツィゴイネルワイゼン」の衣装を着て、リンクに滑り出てきた瞬間の会場のどよめきたるや!
胸熱で言葉を失っている方、目頭を押さえている方……、会場の室内温度が一気に5度くらい上がりましたね。
ジャンプを外した特別構成ではありましたが、その分、指先まで思いのこもった情感あふれる美しいスケーティングでした。
披露してくれたのは、「ロシアより愛をこめて」、「ツィゴイネルワイゼン」、「バラード第1番」の3プログラム。
「ツィゴイネルワイゼン」は2010/11シーズンのFS(フリースケーティング)で、ジョニーが手がけたドラマティックで華麗な衣装も人気でした。
久しぶりにその衣装で滑る羽生選手を見ることができて、懐かしいのと同時に、「その時の衣装がまだ入るの?」という衝撃(笑)。自分目線で考えてはいけませんでしたね。
滑り終わってから、羽生選手が自分の足首にそっと手を添えてお礼を言っていたのも、ちょっと泣けるシーンでした。
フィナーレの挨拶で「オリンピック後は達成感があったのですが、今は割と意欲的に試合に出たいなと思っています」と語っていたように、モチベーションが戻りつつある様子! 嬉しい言葉でした。