お姑さんが、なんと3人も
「インドネシアは一夫多妻制ですから、お姑さんが3人いました」。しかし、しきたりを重んじる家庭で育ったことが、王族の暮らしに役に立ちます。マンデラ恵子さんは、茶道・華道をはじめ、親戚の集まりのための郷土料理の作り方や儀礼、人付き合いのマナーなどを一通り身につけていました。
「親戚の家に挨拶に行く前に、こちらのお姑さんが教えてくれるんですね。『上がってご飯でも、と言われても絶対に上がらないように。皆さん、本心じゃないから、その場で失礼するのよ』というふうに。それを聞いて、私が日本で教わったことと同じだと思いました」。日本での厳しいしつけの多くが、王族の生活に生かせたため、その点の苦労はあまりなかったそうです。
周囲から男の子を期待されていたマンデラさんは、3人の男の子を授かりました。長男が生まれたときは、跡取りに万が一のことがあっては大変と、母乳に配慮してお姑さんが用意した料理以外は食べることを許されなかったといいます。
寺院のお供えを作る女性たち。(画像提供/マンデラ恵子さん)王族の伝統文化を継承し伝える日々
独自のヒンドゥー教が広く信仰されているバリ島で、王族の伝統やしきたりを重んじることも彼女の仕事です。儀式や飾りつけ、お供えの作り方などはお姑さんの指導により習得。日本と同様に儀式が簡略化されていくなかにあって、彼女は現地の人以上に古い文化・伝統の継承に努めています。また、王族やバリ島の伝統文化をマンデラさんは、SNSを通じ、発信中です。
結婚式に用いられる伝統的なお供え物。(画像提供/マンデラ恵子さん)ロイヤルピタマハは五感を取り戻せる場所
最後に日本とバリ島、2つの文化を知るマンデラさんに、ロイヤルピタマハの特徴をうかがいました。
「ロイヤルピタマハは五感を取り戻せる空間です。都会では見失う(心身の)快さに気づくことができますよ」。確かに、鳥のさえずりや水音、風が森の木々を揺らす音など、普段の生活ではなかなか実感できない環境が、ここには存在します。特別な場所まで移動しなくても敷地内を散歩するだけで、気持ちの切り替えにはうってつけの空間と言えるでしょう。
「インドネシアには9世紀からマッサージがあったとされています。当時、すでに岩盤浴があったほか、木のヤニをマニキュアのように爪に塗っていたとも。つまり、インドネシアは非常に美に対して先進的だったのです。私たちはロイヤルピタマハの前身となるホテルを運営していた時代から、スパを始めていました」。数あるバリ島のホテルの中にあってスパの先駆者であるロイヤルピタマハ。インドネシアの美容を熟知する人たちが運営しているからこそ、良質なトリートメントが提供できるのも納得です。
バリ島では随所にお供えが。写真はホテル内で見かけたお供えです。「専属のお供え係が14名いるのも特徴だと思います。ホテル内にお寺がいくつもあり、従業員は出勤前にお参りして、聖水を振り、お米を額に付けるんですよ。この渓谷には見えないものたちが住んでいたとされ、その居所にお寺が建立されているのです。私たちは“お客様が一日、守られますように”と、お願いしています」
渓谷やアジアンフードを満喫できて、芸術にも触れられる。さらにスパや寺院へのお参りで身も心も洗われるロイヤルピタマハ。4回にわたる連載で、その魅力が伝わったと思います。まだ、夏のバカンスの行き先に迷っている方は、こちらで、心行くまでリフレッシュしてみませんか?
※マンデラ恵子さんの絵画展が日本で開催されます。ぜひお出かけください。
日本インドネシア国交樹立60周年記念
『KEIKO MANDERA展』会期:2018年7月27日(金)~29日(日)
(27日:13時~19時 28日、29日:11時~19時)
会場:STUDIO EASE 目黒〔Ground Library〕
東京都品川区西五反田3-1-2 パリマンション
入場無料
Information
The Royal Pita Maha ロイヤルピタマハ
【バリ島発】いざ、五感を取り戻せる地 ウブドへ(全4回)
文・撮影/川田剛史