女優・一色采子の「母のタンス、娘のセンス」〜霜月

異国の布から誂えた帯

引っ張り出してきた母の結城紬は、藍黒の亀甲絣がベース。八掛けに用いられている赤茶色や風合いからは結城紬らしいほっこり感がありますが、市松どりで幾何学的な絣柄を織りだした意匠からはプリミティブな力強さが感じられます。


色映りのよい秋の意匠の染め帯などを合わせたら、正統派のコーディネートになりますが、私は結城紬の持つプリミティブな魅力を引き出したいと考え、あえて異国の布から誂えた帯を合わせました。


ベロア地のような光沢と重量感のあるこの帯は、ウズベキスタンの男性のショールから仕立てたもの。そんな帯のストーリーが、どこかマスキュリンな印象の結城紬と調和し、なんともモダンな「プリミティブ×プリミティブ」なコーディネートが完成！

帯留めは何度も登場しているもので、私が10代の頃に母にプレゼントしたもの。メンズライクなコーディネートに、艶めくネイルの赤と合わせて女性らしさのエッセンスをひと匙。



勝ち虫を施した印伝の鼻緒をあしらった草履も、秋の風情に一役。きものの世界では、「春結城、夏大島」という言葉がありますが、私は秋になると温かみのあるほっこりとした結城紬に袖を通したくなります。