NHK連続テレビ小説『まんぷく』に、主人公・福子が働くパーラーのマスター役で出演中。朝ドラへの出演は『青春家族』(1989年)以来だそう。――そういった細かい作業もあっての、言葉では多くを語らずに表情や佇まい、構図で描く小津作品を思わせるテイストだったのですね。奈良の方言が使われていないのはどうしてですか?「それは単純に、僕しか関西弁がしゃべれる出演者がいなかったからです。方言で台詞をしゃべろうとすると、どうしても言葉に気を取られて、演技への集中力が削がれてしまうところがある。それなら、標準語にしたほうがいいんじゃない? 奈良に住んでいる人達の話ではあるけれども、他の地域にも通じる家族の話であるわけだから……ということで。もちろん、方言を完璧にして臨む方法もあるけれども、今回は監督がイランの人ということもあって、そこにはあまり重きを置かなかったのかなと思います」
――ご自身としては、ネイティブ奈良弁で演じたい気持ちもあったのでは?「それはありましたね。それこそ関西弁と標準語では、言葉や会話のリズムも違ってくるし、当然、人物像も違ってくる。奈良弁で演じていたら、キャラクターのつくり方もちょっと違っていたかもしれない」
――加藤さんが感じていらっしゃる奈良の魅力を教えてください。「それがね、僕にとっては興福寺も東大寺も春日大社も普通に遊んでいた場所。平城京跡にしても、僕らにとっては凧揚げか野球をする場所、みたいな認識でしたからね。そこが特別な場所だという意識もなかったし、奈良のどこが魅力かなんて、考えてみたこともなくて(笑)。ただ、日本最古の神社の一つと言われる石上(いそのかみ)神宮をはじめ、古くから続いているものは本当にたくさんあるし、そういった場所でずっと受け継がれている神事も多いんだろうなと思います」
――食べ物でおすすめのものはありますか?「それも今回、改めて考えてみたんだけれども、三輪そうめんと柿の葉鮨ぐらいしか思いつかなくて(笑)。かつての都で、古くから流通もしっかりしていて、食べ物にも恵まれていたから、意外と発展しなかったのかもしれない。奈良野菜やお茶やお酒もあって、そういうものの発祥の地でもあったりするんだけれども、それをあまり主張しないところが奈良らしさなのかな(笑)。そういえば最近、かき氷には力を入れているみたいです。奈良の氷室で作られた氷は密度が高くて、天皇に献上された古い文献もあるらしい。確かに氷の食感が違うし、頭も痛くならないですよ」