2014年に完成した将軍塚青龍殿
将軍塚には象徴的な建物が2つあります。まずは敷地で最初に目にする大日堂です。こちらは八坂神社のそばにあった小学校の講堂だった建物で、昭和初期に大日堂として将軍塚に移築されました。もうひとつが将軍塚青龍殿。こちらは大正天皇の即位を記念して建立された(旧)大日本武徳会京都支部武徳殿を2014年(平成26)に移築再建した建物で、国宝の青不動が安置されています。武徳殿は京都府警の警察官の武道の稽古場として活用されていました。が、老朽化に伴い、取り壊しの計画が持ち上がり、保存運動も展開されるなか青蓮院が譲り受けて現在の場所に移築したのです。
将軍塚青龍殿。1913年(大正2)に建立された武道の稽古場だった建物を移築再建したものです。もとの頑丈な構造は生かしながら防火・防犯対策、空調設備などを万全にしました。青龍殿の移築とともに造られたのが木造の大舞台です。総面積は1046㎡で、清水寺の舞台の4.6倍の広さがあります。舞台上から一望する京都の眺めはまさしく圧巻というほかありません。
青龍殿の裏手に回ると大舞台が広がっています。大村しげさんの活躍した時代、将軍塚には2つの展望台がありました。ひとつは大舞台に姿を変え、もうひとつの展望台も20数年前に建て替えられました。時が流れたとはいえ、将軍塚から見える風景の美しさは変わりません。
「見下ろす京の町には、鴨川が銀色に輝いて、流れている。川の流れを、帯のようにというのは、ほんまである。それに、お寺の屋根の美しいこと。(中略)南禅寺、黒谷さん、真如堂。西側からは、建仁寺、東西の本願寺などがようわかる。そして、樹木の緑に覆われているところが京都御所、その向こうが二条城。京都駅が割と近う見える」(『静かな京』)
京都観光が盛り上がるのはやはり、春と秋。今年の春、将軍塚青龍殿へ足を運べば、素晴らしい桜と大パノラマが忘れられない思い出になるでしょう。そして大村しげさんの書いた「お山の大将ぼく一人」の心境もきっと理解できるはずです。
Information
将軍塚青龍殿
京都府京都市山科区厨子奥花鳥町28
アクセス | 青龍殿~三条京阪の間で循環バスとピストンバスあり(料金は片道大人230円)。運行時間は京阪バスのホームページでご確認ください。 |
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拝観料 | 大人500円 |
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TEL | 075‐771‐0390 |
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拝観時間 | 9時~17時(16時30分受付終了) |
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開催期間 | 秋季と春季には日没よりライトアップあり。開催期間は、お問い合わせください。 |
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川田剛史/Tsuyoshi Kawata
フリーライター
京都生まれ、京都育ち。ファッション誌編集部勤務を経てフリーライターとなり、主にファッション、ライフスタイル分野で執筆を行う。近年は自身の故郷の文化、習慣を調べるなか、大村しげさんの記述にある名店・名所の現状調査、当時の関係者への聞き取りを始める。2年超の調査を経て、2018年2月に大村しげさんの功績の再評価を目的にしたwebサイトをスタートした。
http://oomurashige.com/ 取材・文/川田剛史 撮影/舟田知史(トライアウト)