【ポルヴォー郊外】沈まない太陽の下、夏至祭を祝う食卓を囲んで
──ミーナ・ヴェスターホルムさん(オーベルジュオーナー)
夏至祭に欠かせないのが、魚と新じゃが。ミーナさんの家でも、サーモンの温燻製や冷燻製、バルト海産ニシンの酢漬け、シナノユキマスの塩漬けなどの魚料理と、ディルをのせたゆでた新じゃが、そのほか、ビーツのサラダ、ミーナさんお手製の群島パンなどがずらりと並ぶ。長く寒い冬を耐えて迎える、6月の抜けるような青い空と暖かい日差し。
待ちに待った、1年でいちばん日が長い夏至を祝う祭りは、フィンランド人にとって最も優先される一大行事です。
この日はほとんどの人が都会を離れ家族や友達、恋人と田舎のサマーハウスで過ごすといいます。
今回、この夏至祭を祝うミーナ・ヴェスターホルムさんのご自宅を、小林聡美さんが訪ねました。
ミーナ・ヴェスターホルムさんご自宅のリビング。夏至祭のティータイムは“ムーミン”の作者トーベ・ヤンソンも大好きだったという、シナモンロールをくっつけて焼いたボストンケーキを囲んで。白夜の幻想的な光の中、白樺林が目の前にある中庭で、ミーナさん、姪のエルビーラさん、甥のエーミルさんお手製の料理を楽しみながら、夏の到来を一緒に祝います。
「フィンランドのかたたちの夏至に対する想いの強さを実感しました」と小林聡美さん。
太陽の光を存分に浴びながら自然に寄り添って過ごす夏至祭。
「この時期は、森を散策したり、花を摘んだり、湖で泳いだりしながらゆっくりと過ごしています」と語るミーナさん。
この日のミーナさんのご自宅も白樺の葉や香り高い野花が随所に飾られ、夏至祭がいかに大切なものであるかということを物語っていました。
エルビーラさんが作った花冠。夏至祭では年齢問わずつけるそう。食後はいちごのデザート。夏至祭ではこの夏初めて採れたいちごをみんなで味わう。玄関の両脇に飾られた白樺の若木。日本の門松のよう。木漏れ日の下、愛犬のハンナちゃんも一緒に。聞こえるのは風が揺らす白樺の葉の音と話し声のみ。淡いピンク色が可愛い飲み物は、中庭で採れたルバーブを使ったジュース。「すっきりとした甘酸っぱさでおいしい」と小林聡美さん。 〔特集〕愛されるデザインと心豊かな時間「北欧の美しき暮らしを訪ねて」(全10回)
撮影/本誌・坂本正行 スタイリング/藤谷のりこ(小林さん) ヘア&メイク/北 一騎〈Permanent〉(小林さん) コーディネート/森下圭子 取材協力/フィンエアー、ホテル ヘイブン、ヘルシンキ・マーケティング、ヴィジット・ポルヴォー
『家庭画報』2019年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。