新しい自分を発見する絶好の機会
日本人は優しくて勤勉で責任感もありますから、東京2020大会のボランティアの皆さんが素晴らしい活動をしてくださることは間違いないと思っています。ただ、一つだけ気がかりなのが、日本人の美徳でもある生真面目さが裏目に出てしまわなければいいな、、ということです。
このような大きな大会ですから、あらゆることにマニュアルが存在すると思います。そして、そのマニュアルにきちんと従おうとする真面目さも日本人のいいところです。ただ、大会中には想定外なことが多々起こるはずです。ましてや、世界中からたくさんの人が来ているわけですから、マニュアル通りに進めるのが難しい場面も出てくるでしょう。そんなときは、一人ひとりの要望にすべて細かく応える必要はないと思いますが、かたくなにマニュアルを押し通すのではなく、自分の良心に従って、許容範囲の中で多少融通をきかせてもいいのではないかと思います。
そういうちょっと予想外のことが起こったときも、忘れないでほしいのは、ボランティアの皆さんにとって一番大事な笑顔です! ぜひ、外国の人たちに笑顔で話しかけてください。英語ができなくても大丈夫。にっこり笑って、「ハロー!」だけでも十分です。笑顔で挨拶されて嬉しくない人はいません。
皆さん、オリンピック・パラリンピックを楽しもう!と思って日本まで来てくれている人たちですから、きっと笑顔で返してくれます。そして、一度そういう嬉しい経験をしたら、どんどん声をかけていこう!と思うようになりますよ。
最後に。オリンピック・パラリンピックのボランティアは新しい自分を見つける絶好の機会でもあります。今まで経験したことのないことに夢中で取り組むなかで、必ず新しい自分に出会えます。最高の笑顔で大会を終えられるように全力でがんばってください。応援しています!
みんなでつなげよう東京2020への“和”と“心”
コラムの締めは毎回、僕のメッセージを凝縮した一文字の書。“心”がすべての根っこにある!という思いをもとに書いています。第5回は「笑顔心」。ボランティアの皆さんに限らず、オリンピック・パラリンピックにはぜひ、笑顔で集まりましょう! 松岡 修造 SHUZO MATSUOKA
1967年東京都生まれ。86年にプロテニス選手に。95年ウィンブルドンでベスト8入りを果たすなど世界で活躍。現在は日本テニス協会理事兼強化本部副本部長として、ジュニア選手の育成とテニス界の発展に尽力する一方、テレビ朝日『報道ステーション』、同『TOKYO応援宣言』、フジテレビ『くいしん坊!万才』などに出演中。近著に『弱さをさらけだす勇気』。8月2日、東京2020オリンピック日本代表選手団公式応援団長に就任。
公式サイト>> 撮影/鍋島徳恭 スタイリング/中原正登〈FOURTEEN〉 ヘア&メイク/井草真理子〈APREA〉 取材・文/清水千佳子 衣装協力/KONAKA