楽想を書き綴った住まい
ボンにある生家、ベートーヴェン・ハウス・ボン(生誕~21歳/Bonngasse 20, 53111 Bonn)。「ようこそ。いま作曲した歌曲を聴きますか?」――ベートーヴェン
ベートーヴェンは動き回る人でした。森を数時間も散歩し、ウィーン市内を数十回も引っ越し。動いて発想力を高めたのか、あるいは動かざるをえなかったのか―。
ある女性の友人が家を訪ねたときの様子を記しています。
「彼がピアノの前に座っているのを見つけました。名前を告げますと、大変親し気に、いま作曲した歌曲を聴きますかと尋ねたのです。彼は鋭い、耳をつんざくような声で歌いました。そしてピアノを弾き出すと、長く、驚くような演奏をしてくださいました」。
周囲を気にせず、懸命に自分の声を聴き、音を伝えようとした、そんなベートーヴェンの切実な姿が想像できます。
※ベートーヴェンゆかりのスポットは、以下のフォトギャラリーを左右にスワイプしてご覧ください。
〔特集〕ベートーヴェンの力の源を求めて(全3回)
【生誕250周年特別企画】ベートーヴェン 魂を揺さぶる音に出会う旅
本特集の感動をそのままに体験できる、「ベートーヴェン 魂を揺さぶる音に出会う旅」にご一緒しませんか?
この度、ウィーンにゆかりのあるベートーヴェンの生誕250周年を記念して、特別な2つのコンサートを心ゆくまでご堪能いただけるツアーを、“家庭画報の旅”として2020年5月に開催いたします。
ツアーの詳細はこちらの記事よりご覧ください>>> 【生誕250周年にベートーヴェンを知る、聴く】
記念の年に、ゆかりの地で開催されるイベントを集めました。
Bonn[ボン]
●ベートーヴェン音楽祭 ・2020年3月13日〜22日:ベートーヴェンの交響曲9曲と、欧州諸国を代表する作曲家作品を組み合わせたコンサートなど。
https://www.beethovenfest.de/en/ ・2020年8月21日 特別公演:ケルン大聖堂での『ミサ・ソレムニス』。 ・2020年9月4日〜27日:「復活の年」をテーマに、ベートーヴェン交響曲第9番(バイロイト祝祭管弦楽団)で始まり、マーラー交響曲第2番「復活」で幕。
●ベートーヴェン・ハウス・ボン 2019年末より自筆譜オリジナル10~20点が常時公開へ。「新しいベートーヴ ェンを発見し、音楽への愛を感じてほしいです」と館長ユリア・ロンゲさん。 常設展では日本語ガイドもあり。デジタル・アーカイブも充実しています。
ベートーヴェン・オーケストラ・ボン劇作家 ティルマン・ビュッティヒャーさん ベートーヴェンは、今生きている!
「ボンでは今年12月16日から、2020年の同日まで、生誕250周年特別企画を予定しています。ベートーヴェン・オーケストラ・ボンもその一環。ベートーヴェンを、遠い存在ではなく、“今生きている”と身近に感じていただける企画を考えています。12月16日のオープニング公演では交響曲全曲を多様な楽器とコラボレーションし、物語やDJも入れます。クロージング公演(2020年同日)では現代作曲家マックス・リヒターによるベートーヴェンへのオマージュ作品で、『人類は皆兄弟である』というメッセージを伝えます」
Wien[ウィーン]
●ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ・年末年始コンサート:2019年12月30日~2020年1月1日アンドリス・ネルソンス指揮 ・ベートーヴェン交響曲全曲演奏:2020年5月23日~6月7日・全8回アンドリス・ネルソンス指揮
●アン・デア・ウィーン劇場 オペラ『フィデリオ』初演時の再現公演(2020年3月16日~27日)、「第九」の人類愛などをテーマにした青少年ミュージカル(2020年6月28日~30日)など。
https://www.theater-wien.at/en/home ©Julia Wesely ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 団長 ダニエル・フロシャウアーさん 一つの融合された交響曲の世界を!
「2020年、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団では、アンドリス・ネルソンスなどの指揮者を招いたベートーヴェンの演奏会を数多く予定しています。交響曲全曲演奏にあたっては、一つの融合されたスケールの大きな世界を築きあげたいです。ベートーヴェンは神の音楽の王国を創造したかったのでしょう。この9曲には彼の激しさ、優しさ、美しさがすべて込められています。若く新鮮な指揮者ネルソンス氏とともにベートーヴェンの音楽を創造し、その神髄に近づけたらと期待しています」
〈ベートーヴェンの言葉は以下より引用〉
・小松雄一郎訳『ベートーヴェンの手紙』上下巻(岩波文庫)
・ロマン・ロラン著、片山敏彦訳『ベートーヴェンの生涯』(岩波文庫)
撮影/武田正彦 取材・文/菅野恵理子 編集協力/三宅 暁 取材協力/太田真理エリザ 武田倫子 撮影協力/ドイツ観光局
『家庭画報』2020年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。