ついに独立、「LIENDE PARIS」を立ち上げる
15年という長きにわたり在籍したミッシェル・クラン社を2017年退社、そして独立。自身のデザイン会社「CREAFIDEMS(クレアフィデムス)」を設立しました。しかし実は独立直前まで、今後の方向性が定まっていなかったのだとか。
「ちょうどその頃、パリ在住の作家、辻 仁成さんから、彼が運営するウェブマガジン『Design Stories』と伊勢丹新宿店のコラボレーションで、海外を拠点とする日本人デザイナーをフィーチャーする企画が持ち上がっているから、やってみないかと。即答で、ぜひやらせてください!といったものの、その時はまだ何をするかも決めていませんでした。
「子供時代は漫画家になりたかったほど(笑)、絵を描くことが好き」。手描きのデザイン画は緻密で美しい。しかし、洋服のブランドを立ち上げるには莫大な資金が必要となる。それと同時に、洋服畑を歩いてきたミッシェル クラン時代とは違う、“新しいもの”を生み出したいという欲求もありました。そこで以前から魅力を感じていたレザーという素材をより深く知るためにも、バッグブランドを立ち上げてみようと思ったのです」。
デザインをPC上でデータ化したもの。初めてのポップアップショップは大盛況
そして誕生したのが、「リアルに日常に取り入れられながらも、他にないデザイン」にこだわったLIENDE PARISのバッグ。なかでも特徴的なのが、切り替えのあるハンドルのデザイン。湾曲したハンドル部分にレザーの切り替えを入れるディテールは、高度な技術を要します。
そこで、数々のラグジュアリーブランドのレザーアイテムの製造を手がけるイタリアのファクトリーに生産を依頼。想像以上に高いクオリティのサンプルの出来栄えに自信を深め、満を待して伊勢丹新宿店でのイベントに参加。一週間のイベントは予想を超える売り上げで、好調なデビューを果たしたのでした。
切り替えのあるハンドルなど、印象的な配色パターンもLIENDE PARISのバッグの個性の一つ。たくさんのレザースワッチを元に、カラーコーディネートを考えます。今ではLIENDE PARISのデザインのほか、古巣「ミッシェル クラン」のライセンスアイテムのデザイン、日本やフランスブランドのデザイン、また故郷・新潟のデザイン専門学校の講師など、幅広く活躍。パリから日本、そして世界へ
“絆、繋がり”という意味を持つLIEN(リアン)という言葉から生み出された造語である「LIENDE PARIS(リアンドゥ パリ)」というブランド名には、人と人、人と物との出会いを大切にし、その繋がりによって“新しいもの”を生み出したい、という佐藤さんの思いが込められています。
「まだまだ、やりたいことがたくさんあります。これまで携わってきた洋服にも再びトライしたいし、家具も作ってみたい。日本の職人とコラボレートしたり、日本の伝統素材も取り入れてみたい。そしていつかは、“その人のためだけ”の、服もバッグもトータルでパーソナルスタイルを提供できるセミオーダーシステムを提案したい。そのベースを作るのが、今の目標ですね」。彼の熱意は、次から次へと生まれるアイディアと夢へと繋がっていきます。
次週は、佐藤さんが生み出すLIENDE PARISの2020年新作バッグをご紹介します。1月15日配信予定。お楽しみに。
佐藤康司/Koji Sato
ファッションデザイナー、「LIENDE PARIS(リアンドゥ パリ)」デザイナー
新潟市出身。1998年に渡仏。「イヴ・サンローラン オートクチュール」のタイユール(テーラード)のアトリエで研修後、当時マルタン・マルジェラ氏が手がける「エルメス」を経て、2001年より「ミッシェルクラン」のアシスタントデザイナーに。アパレル、アクセサリー、テキスタイル、刺繍、ライセンスを担当。10年よりデザインディレクター兼コレクション責任者に就任。17年に独立、同11月に新バッグブランド「LIENDE PARIS(リアンドゥ パリ)」(
https://liende.paris/ja/)をローンチ。18年よりフランス・日本両国で本格的始動。その他様々なプロジェクトを進行中。
Information
■阪急うめだ本店「バッグアトリエ」で LIENDE PARISのポップアップショップを2020年1月8日〜22日開催。期間中の1月11、12、13、18、19、20日は佐藤さんが来店予定。ご希望のお客様にはバッグにペイントを施す特別サービスも! 電話06-6361-1381
詳細はこちら>>■今春より、ウェブサイトでのオーダー販売がスタート予定。
「 LIENDE PARIS」https://liende.paris/ja/
ルロワ 河島 裕子 / Hiroko Kawashima Leroy
ファッションライター。『家庭画報』をはじめ大人の女性に向けた雑誌で、ファッションやジュエリー、時計を中心に幅広く執筆。2018年より、家族とともに、拠点をフランス北部の田舎に移す。2019年夏、ついに憧れのブルゴーニュに家を購入! 夢は夫とともにB&Bを営むこと。パリで道ゆくおしゃれな人に体当たり取材する「
パリ、大人のおしゃれの見本帳」、行き当たりばったりのフランス移住エッセイ「
意外となんとかなる!? 40代のフランス移住」を同サイトで連載中。
写真/水島 優 編集・取材・文/ルロワ河島裕子