「茶の色映りがいい白天目茶碗は日本の美意識です」──千さん
左上から時計回りに・「土岐伯庵」、「重要文化財 菊花天目」、「台 菊形」、「珠光青磁 銘 青簾」、「建盞(けんさん)天目」、「白天目」、「台 唐物真塗 砂張覆輪」。左端は「菊花天目」の箱。茶会の支度──
亭主七分、客三分。準備はにぎやかに
藤田美術館の祖である藤田傳三郎が武者小路千家第11代一指斎(いっしさい)宗匠の下で茶道を習い、茶道具のほぼ一切を谷松屋戸田商店から購入していたことから、明治時代からおつきあいのある藤田家、千家、戸田家の三家。
年齢も近く交流の深い三家のお三方が茶会の前日、久々に奈良に集まって、道具組みの作戦会議が始まりました。
藤田 茶碗はどれにしようか、とても悩みました。道三が生きていた頃の茶の湯を想像し、まずは天目茶碗がいいだろうと。それでこちらの菊花天目を持ち出したのですが。
戸田 重要文化財の茶碗ですね。
藤田 そう、重厚でいて美濃らしい茶碗なのですが、信楽の水指と合わせてみると、どうも今一つピンとこない。信楽の荒々しい褐色の肌に合うのは、白天目のほうだろうなと。
千 菊花天目は小堀遠州愛蔵の逸品ですね。箱書の字も、中身にふさわしい堂々たる筆致です。
戸田 いい道具は自ずといい箱に収められ、いい風呂敷に包まれているもの。風呂敷を見ただけで大体わかります。
「土岐伯庵茶碗」。江戸幕府の医師、曾谷(そや)伯庵が所持していたことからついた名称で、同種のものが十数碗現存する。これはそのうちの沼田藩主土岐氏に伝わったもの。藤田 この伯庵茶碗も捨てがたい。土岐氏が所持していたので「土岐伯庵」。土岐氏は道三が最初に仕え、のちに離反して美濃の国盗(くにとり)をするのでね。
千 世に10碗あるかないか、そのうちでも1、2を争う優品ですよ。
藤田 珠光青磁は珠光が好んだ中国渡来のもので、しかも奈良出身で奈良の称名寺の僧でもあったことから、趣向に合うと思うのですが……。
戸田 大方の青磁の凛とした雰囲気とは異なり、いかにも侘びていますね。
「青井戸茶碗 銘 紹鷗(じょうおう)」は、朝鮮半島で焼かれたもの。胴に深くろくろ目がめぐる。藤田 ああでもない、こうでもないといっているこの時間が楽しくて。
千 茶会の楽しみは亭主七分、とはまさにこのこと。準備も醍醐味なのです。
【茶会の魅力を語る3人】
武者小路千家 第15代家元後嗣 千 宗屋さん1975年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学大学院前期博士課程修了(中世日本絵画史)。2003年後嗣号「宗屋」を襲名。同年大徳寺にて得度。隨縁斎の斎号を受ける。
藤田美術館 館長 藤田 清さん1978年、藤田傳三郎から数えて5代目にあたる藤田家四男として神戸に生まれる。大学卒業後、2002年に藤田美術館へ。13年に館長就任。現在は22年の美術館リニューアルオープンに向けて奮闘中。
戸田商店 戸田貴士さん1981年、谷松屋一玄庵の12代目、戸田 博氏の長男として大阪に生まれる。3年間のフランス留学を経て、2003年に江戸時代から続く茶道具商谷松屋戸田商店に入社。現在は同社の代表取締役副社長。