今までの人生を思い出す そのきっかけを常に発信
最もチケットが入手困難といわれる井上さんの出演作。近年は舞台だけでなく、映像作品でも活躍する井上さんが、目指すところは……? 「“こういうこともやってみない?”といってもらえるのはうれしいので、応えたいんですよね。その結果、新しい世界が広がれば、よりうれしいですし。あとは、自分のホームであるミュージカルの舞台に立たせてもらうときのために、少しでもいい環境にしておきたくて。今回であれば『グレート・ギャツビー』が公演として成立しなければ、次はない。だから、成立させるために、いろいろなところに顔を出したり、いろいろなことをして知ってもらって。どうにかして盛り上げたいんです」 さまざまな場での井上さんの発言からは、個々の公演はもちろん、ミュージカルそのものを盛り上げたいという気持ちを強く感じます。 知ってもらえば、好きな人が絶対に増えるという確信がある
「何年も何十年も続けたいわけだから、ミュージカル全体を底上げすることが一番だと思うんです。それに、知ってもらえば、好きな人が増えるという確信がある。僕にとってミュージカルは、それくらい魅力的なものなんです。そのよさがまだ伝わっていないんじゃないかという憤りに似た気持ちもありますね」 それほど井上さんが惹かれるミュージカル。未だ触れたことのない人に、一度はどこかで耳にしたであろう『グレート・ギャツビー』は最初の作品に最適かもしれません。 「舞台で観るというのは体験することに一番近いと思うんですよ。生の人間が目の前でやっているので。そこでギャツビーの人生を観ることで、これまでの人生を思い出したり、考えたり。それは、これから先の人生においてとても有益なんじゃないかなと。僕らはそのきっかけを常に発信しつづけたいですし、毎日が豊かになったり、救われたりっていうことがあったらいいなと思っています。チケットも決して安くはないんですけど、高くもないって思ってもらえるようにやっていますので、ぜひ劇場にお越しください」 井上芳雄/Toshio Inoue
1979年生まれ、福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科在学中の2000年にミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビューして以降、ジャンルを問わず舞台を中心に活躍。CD制作、コンサート、ディナーショーなど音楽活動も意欲的に行い、近年では映像作品にも活動の幅を広げている。2017年にはNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』にも出演。ミュージカル『グレート・ギャツビー』出演後は、9月に『謎の変奏曲』(世田谷パブリックシアターほか)、11月に『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』(シアタークリエほか)が控える。
撮影/森崎純子
取材・文/西川敦子
家庭画報別冊『ときめき』2017春号 掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。