母の曲を歌うことに対して、プレッシャーしかなかった
収録されている8曲は、当時の山口さんを知らない世代にも広く知られている楽曲ばかり。それだけに、歌うのは「プレッシャーしかなかったです(笑)」。そのプレッシャーを跳ね除けられたのは、アレンジのおかげだといいます。 「宮永さんのアレンジを聴いた瞬間に、大丈夫だと思えたんです。楽曲と母に対するリスペクトを忘れずに、格好つけず自分を出せば大丈夫だって、なんの根拠もありませんけど、漠然と安心できて。今回、誰が一番大変だったって、たぶん宮永さんだと思うんです。完成されたオリジナルを崩すのは相当な勇気だし、苦労だし。若い人たちが聴いても古く感じない、かつ原曲を知っている人にも違和感なく受け入れてもらえる。そのバランスをとるのは、歌う僕なんかよりもずっと大変だったと思います」 細かい部分のアレンジに関わることはあったといいますが、大枠は宮永さんにまかせたと三浦さん。 「宮永さんにお願いしてよかったと本当に思います。レコーディングのときも、楽曲自体が持つよさとアレンジに引っ張られて自分の歌がちゃんと歌えました」 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREでのバースデーライブの様子。この日、『さよならの向う側』も披露。
言葉とメロディの密接さを痛感し、母の歌い方を研究
レコーディングでは、歌い出しや言葉尻、ビブラート、息の量など、山口さんの歌い方を意識したといいます。 「なぜかというと、言葉とメロディがすごく密接なんですよ。少しでも歌い回しを変えると、言葉が全然入ってこなくなることを痛感しました。意識していても、たまに自分の癖が出てしまうんですよね。それを客観的に聴くと、今まで情景が浮かんでいたのに、とたんに伝わらなくなって。だから、母の音源を聴き込んで、母の歌い方みたいなものをすごく研究して歌いました」 言葉とメロディの密接さは、これまでも意識していたそうですが、「もっと音と言葉をちゃんとカップリングしなきゃダメだと思いました。この言葉を伝えたいからこのメロディなんだ、この言葉だからこのメロディが生きる。そのぴったりフィットしている感じに、今回気づけました」。 このことが今後の自身の音楽にもきっと影響するという三浦さん。10周年の節目に出すアルバムとして、とても大きな意味のある1枚になったようです。 三浦さんのライブは、40〜50代のお客様も多いそう。アルバム発売後、千葉、福岡、佐賀、大阪で発売記念ミニライブも開催されます。