食感、香り、味わいのすべてが計算し尽くされた「MORI YOSHIDA」の真骨頂
現在日本のブティックでは、「モンブラン」だけを提供している「MORI YOSHIDA」ですが、パリでは、モンブランをはじめ、先述の「M」の他にも、ショーケースに並ぶガトーのどれもがシグネチャーといえるほど、個性豊かでそれぞれに多くのファンを獲得しています。
なかでも筆者が忘れられないのが「ベージュ」です。
吉田さんが「食感と香りをしっかり伝えるために、試行錯誤した」と語るこちらは、チョコレートタルトの中にオレンジが香るガナッシュ、ふわりとした香り豊かな紅茶のムースのコンビネーション。
そこに加えられたシトロンヴェール(ライム)の隠し味が、それぞれの美味しさを引き立てています。
軽やかさのある繊細な味わいに“日本人のアイデンティティ”を感じさせる、吉田さんが生み出すガトー。「ベージュ」は、それぞれの食感のコントラストと、鼻に抜ける香りの競演が楽しい一品。6€フランス人のノスタルジーを誘うフランは、競合ひしめくパリでも屈指の評価
日本人にとって、ショートケーキやプリンが幼い頃から食べ親しんだ味ならば、フランス人にとって「フラン」はまさに永遠の定番。
日本にも出店しているスーパーパティシエ、クリストフ・ミシャラク氏が自身のインスタグラムにあげたことから一気に話題となり、フランス版『VOGUE』での「パリで買うべきフラン」特集でも超人気店とともに紹介されるなど、味にうるさいエディターや美食家たちにも注目される一品です。
「オープン当初からよく出ていたのは、エクレアや、タルト オ シトロン、そしてフランといった、どの世代にも愛されるパティスリーの定番。日本人が寿司屋でこはだや玉子などを食べて店の実力を測るように、フランス人も王道の菓子を試してその店をジャッジする。だから定番ほど、大切なのです」と吉田さん。シンプルながら奥深いクレームアングレーズの味わいのフランは、大きめのポーションでもペロリと完食できてしまいます。「フラン」4.5€ノンアルコールの「ババ」は爽やかな味わい
パティスリーというと“女性”がメインターゲットというイメージをお持ちかもしれませんが、パリ、ことMORI YOSHIDAでは、女性も男性も老いも若きも、そのパティスリーの魅力に引き込まれるようです。特に夕方には、多くの40、50代の男性たちがガトーを買っていく姿が。
重たすぎず繊細な味わいに加え、どこかすっきりとしたスタイリッシュなガトーの見た目も、甘党ではない男性たちの心を惹きつけるのかもしれません。
「ババ」はあまり得意ではない、といっていた我が夫もハマった、パッションフルーツを効かせた爽やかなババ。可愛い見た目は、手土産としても喜ばれます。「ババ トロピック」6€