ゴッホゆかりの地、アルルに咲くヒマワリ。写真/横田秀樹
ファン・ゴッホは誰よりも浮世絵に大きく影響を受けた
ガーデニングエディターの高梨さゆみです。毎週更新の花と庭を愛でる旅情報、今週はフィンセント・ファン・ゴッホが描いた花に出会う旅へのお誘いです。『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』が、2018年1月8日(月・祝)までは東京都美術館、1月20日(土)からは京都国立近代美術館で開催されます。ファン・ゴッホが見た“日本の夢”、そしてファン・ゴッホに憧れた日本、その巡り会いの軌跡をじっくりとご堪能ください。
《ポプラ林の中の二人》(1890年)。日本初公開。アルル時代、そして精神を病んで療養していたサン・レミ時代を経て、晩年のオーヴェール時代に描いた作品。人物よりも美しい下草を主題と位置づけている。シンシナティー美術館蔵(メアリー・E・ジョンストン寄贈)。©Cincinnati Art Museum, Bequest of Mary E. Johnston, 1967.143
【連載】旬を愛でる花旅 ・庭めぐり 10月~11月の名所[第8回]横浜イングリッシュガーデンでハロウィン&秋バラを楽しむ[第9回]週末はフォトジェニックな秋のイングリッシュガーデンへ![第10回] 一生で一度は見ておきたい、京都・嵯峨野の紅葉名所→花の名所をもっと見る19世紀後半、ヨーロッパ各地で開催された万国博覧会をきっかけに、パリを中心にジャポニスム(日本的趣味)が一大ブームとなりました。とくに絵画の世界では浮世絵が高く評価され、モネ、マネ、ドガ、ルノアール、ゴーギャンなど印象派を代表する画家たちは大きな影響を受けたといわれています。
画商をしていた弟のテオを頼りに1886年にパリにやってきたファン・ゴッホもすぐさま浮世絵に夢中になり、当時はまだ安く入手できた浮世絵を集め、カフェで展覧会を開くほどの熱中ぶりだったそうです。浮世絵を徹底的に研究し、模写し、浮世絵のもつ平明でフラットな色面構成や、西洋画とは異なる遠近法を学んだうえで、ファン・ゴッホは浮世絵にはない強烈な原色の対比を用いたオリジナルの作風を打ち立てていきます。
1887年、パリでゴッホが描いた《花魁(溪斎英泉による)》。今回の展示では元絵の溪斎英泉《雲龍打掛の花魁》も展示されている。ファン・ゴッホの《花魁》の周囲に描かれたカエルや鶴も別の浮世絵から取り入れたもの。ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵。©Van Gogh Museum, Amsterdam(Vincent van Gogh Foundation)
今回の「ゴッホ展」は、6年もの準備期間をかけ、アムステルダムのファン・ゴッホ美術館と日本のスタッフが綿密な打ち合わせ、各地のコレクションとの出展交渉を重ねて開催に至りました。ファン・ゴッホが模写した浮世絵や日本の文化について知識を得た雑誌や小説などが、ファン・ゴッホの作品とともに時間軸に合わせて展示されていて、ファン・ゴッホの作風が徐々に変化してゆく様子がとてもわかりやすくなっています。
最後のほうでは解説を見る前に「あっ、この絵の背景は今までと違う!」と絵画素人の私でもわかり、その発見に少し嬉しくなりました。