――海宝さんは日系2世のサミー・キムラ役。中河内さんは、強制収容所でキムラ家と出会い、濱田めぐみさんが演じるサミーの姉ケイと惹かれ合っていくフランキー・スズキ役ですね。どう演じたいですか?「日系人の人権を求めて闘うフランキーは熱い男。自分の持ち味を出せるんじゃないかと思っています。アメリカらしいショーアップされたダンスナンバーも1曲あるので、そこも楽しみです。とにかくできるだけいろいろな資料を読んだり見たりして、稽古に備えたいですね。当時のことを知れば知るほど、想像を広げて役の感情や感覚を理解できると思うし、これはあのときの自分の感情と近いものがあるなというふうに、役との距離を埋めていくことができます。僕は広島出身で、祖父が被爆している被爆者3世なんですね。戦争については勉強してきた県民だと思うので、そこは生かせたらいいかなと思います」
――お祖父さまからは被爆時の話を直接聞いているのですか?「はい。祖父は原爆のことを“ピカドン”と言っていました。遠くで光ったのに、気がついたら割れた窓ガラスの破片がそこらじゅうに散っていたそうで、ケロイドを見せてくれました。灼熱地獄の中、よく生き延びたなと思います。授業では、爆心地のもっと近くにいた方々の話をお聞きする機会もあって、戦争は本当に恐ろしいと子どもながらに思いましたね。この作品はアメリカに渡った日系人の話ではあるんですが、やはり戦争によって生活がめちゃめちゃにされて、家族が引き裂かれてしまう。何の罪もない人がそんな目に遭ったのかと思うと、やりきれない気持ちになるし、戦争は絶対にしてはいけないと改めて強く思います」
――ご自身にとって故郷はどういう存在ですか?「このコロナ禍で、自分と家族のことで精いっぱいなこともあると思うんですが、上京した頃にあった“故郷に錦を飾るぞ”というような気持ちは、今はあまりないですね。でもやっぱり地元は好きで、僕が通っていた広島の幼稚園にダンスを教えに行ったりしています。副園長として戻っていらした担任の先生が、呼んでくださって。少しは恩返しできているのかなと思っているんですが」
15歳でダンスと出合い、18歳のときにニューヨークにダンス留学もした中河内さん。撮影時にはリクエストに応じて、即興で華麗なステップを見せてくれた。