フィギュアスケート愛(eye)とは……本誌『家庭画報』の「フィギュアスケート」特集を担当する、フリー編集者・ライターの小松庸子さんが独自の視点で取材の舞台裏や選手のトピックスなどを綴ります。
連載バックナンバー>>>いよいよ本格的にシーズン開幕。Japan Openの会場を沸かせたスケーターは……
その年のフィギュアスケートシーズンの本格的な幕開けとなる10月。国内ではJapan Openに始まり、各地域での地方大会、海外でもグランプリシリーズが開催されるなど、一気にフィギュアスケートボルテージが高まる月ともいえます。
毎年10月初めに開催されるJapan Openの会場を訪れると、今季への期待と興奮に会場が包まれているのを感じます。
10月6日に行われた今回のJapan Openも大いに盛り上がりましたが、特に万雷の拍手でたたえられたのは織田信成さんと町田 樹さんでした。
ご存じのように、すでにお二人とも現役を引退されてはいますが、アイスショーなどに登場して披露する演技は、進化・深化し続けています。努力を重ねる姿が、現役選手たちに大いなる刺激を与えていることは間違いなく、日本のフィギュアスケート界におけるその功績は計り知れません。
残念ながら、町田 樹さんは次なるステージを目指して、プロスケーターからの引退を表明されてしまいましたが
(→記事参照)、織田さんにはできるだけ長くオンアイスにとどまっていただきたいと切に願います。
今回、Japan Openで披露した演技を観たら、誰もがそう思うはず! というわけで、10月に行われた大会の中で特に注目した演技の1つ目として、織田信成さんをご紹介します。
毎年、進化が止まらない!その滑り、まさに現役感
華麗にジャンプを決める一方で、Y.M.C.A.の振り付けも入れる心憎い演出。ライバルチームの選手たちもみな、織田さんのスケーティングを楽しんでいました。写真/築田 純/アフロスポーツ織田信成さん
FS(フリースケーティング)「Y.M.C.A.」176.95点 Japan Open
昨年のJapan Openが終わった後、「もう公式戦には出ないかも」と漏らしていましたが、新ルールの元で挑戦してみたいという気持ちと、2018年2月に行われた平昌五輪を見て心に火がついたとのことで、みっちりと練習を積んで再びの登場。
「ヴィーナス」や「That’s the Way」、「Y.M.C.A.」などが組み込まれた80年代ディスコミュージックメドレーを織田さんが滑って、盛り上がらないわけがありません。振り付けを担当したステファン・ランビエールさんもリンクサイドに立ち、ノリノリで応援していました。
しかも、冒頭の4回転トーループ-3回転トーループの連続ジャンプをはじめ、トリプルアクセル、3回転ルッツなど、7つのジャンプすべてに成功。
2013年に現役を引退した織田さんは今、31歳。記者席では「えっと……織田さん、まだ現役でしたっけ? というか、もうこの際戻ってしまえば?」と、驚きと称賛を伴った声があちこちから聞こえていました(笑)。現役選手の皆さんは開幕戦にピークを合わせるわけにもいかないので、一概には比べられませんが、それにしてもあっぱれな織田さんの演技。高い技術を伴った、エンターテインメントを堪能させていただきました。