幸福長寿に導く5つの活 第15回(全16回) 「幸福長寿」の決め手は、健康寿命をいかに延ばせるかということ。そして、それは自分でも心身の衰えを感じるようになった今からの生活の過ごし方とも深くつながっています。“現在の私と未来の私”のためのセルフメンテナンス法をご紹介します。
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歯の機能は健康寿命と直結する
近年、歯周病が糖尿病や心臓病などと関連することが明らかになってきています。歯や口腔内をケアして、その機能を保つことが健康寿命を延ばすための重要な鍵なのです。加齢による歯の変化、オーラルケアのポイントを知っておきましょう
〔お話ししてくれたのはこの方〕俵木 勉先生いづみや歯科院長 明海大学臨床教授 日本顎咬合学会 副理事長。1982年城西歯科大学を卒業、86年同大学大学院修了(歯学博士)。89年埼玉県狭山市で開業。2016年から明海大学歯学部臨床教授を務める。専門はインプラント歯科。Q 歯や口腔内は加齢とともにどのように変化しますか?
A 歯周病が進みやすくなり、あごの骨や歯槽骨の形が変わることもあります。歯を失う主な原因は歯周病、虫歯、歯の破折で、特に歯周病は加齢で進みやすくなります。歯周病を起こす歯周病菌は食後に食品をエサに歯の表面に黄白色の歯垢(プラーク)を作り、毒素を出して歯肉炎を起こします。進行すると歯と歯肉の間にすき間ができ、歯槽骨が溶けて歯が抜けてしまいます。
歯を失わないまでも、咀嚼や食いしばり、歯ぎしりによって臼歯がすり減ったり、歯槽骨やあごの骨が増殖して飛び出る骨隆起が起こったりします。
歯の構造
加齢や歯周病、食いしばりなどによって起こる変化
1.歯の表面の磨耗や歯肉の退縮食いしばり、歯ぎしりなどによって、歯の表面の山が削られて、平らになる。飲食物の酸で溶け、象牙質が表出して斑点状になることもある。
歯周病や強すぎるブラッシングで歯肉が下がり、象牙質が表面に出る。象牙質は軟らかく、虫歯になりやすい。
歯周病で歯肉と歯の間にポケットができ、細菌の塊であるプラーク(歯垢)が溜まる。プラークはやがて石灰化して歯石となる。歯石がつくとさらに歯周病が進行する。
2.骨隆起食いしばりや歯ぎしりが習慣化し、歯を支える骨が嚙む力に対抗して成長し、出っ張ってくる(骨隆起)。イラストのように下あごの歯槽骨が隆起するほか、上あごの骨が隆起することもある。自然に消失することはほぼない。病気ではないが、義歯を入れるときに支障が出ることがあり、その場合は手術で骨を削る。