幸福長寿に導く5つの活 最終回(全16回) 「幸福長寿」の決め手は、健康寿命をいかに延ばせるかということ。そして、それは自分でも心身の衰えを感じるようになった今からの生活の過ごし方とも深くつながっています。“現在の私と未来の私”のためのセルフメンテナンス法をご紹介します。
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更年期症状を和らげ、血管や骨を守る。“今とこれから”の元気を支える医療
更年期を穏やかに乗りきり、その先の人生も元気に過ごしたい――。今、多くの女性たちがホルモン補充療法(HRT)に注目しています。閉経後の体の変化、HRTの効果、使い方やリスクなど、正しい基礎知識を得ることが、幸福長寿を叶える医療の選択肢を広げます。
〔お話ししてくれたのはこの方〕小川真里子先生東京歯科大学准教授 市川総合病院 産婦人科医長。福島県立医科大学卒業。慶應義塾大学医学部産婦人科を経て2015年より現職。更年期医学と女性心身医学を専門とし、多くの女性のホルモンにかかわる悩みに対応している。日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医。閉経後、エストロゲンが欠乏。心身に多様な症状が現れ、血管や骨の老化も進む
「更年期」とは閉経の前後5年間の時期を指し、日本人の平均閉経年齢は約50歳です。更年期になると女性ホルモン(エストロゲン)の量が急激に減り、代わりに卵巣を刺激して女性ホルモンの分泌を促す卵胞刺激ホルモン(FSH)の量が増えてきます。
それに伴い、のぼせ、ほてり、発汗、めまいなど自律神経系の症状が現れます。そして手のこわばり、関節の痛み、動悸、頻尿、萎縮性腟炎、性交痛、疲労感、不眠、冷えなどの身体症状や、不安、イライラ、抑うつ、物忘れ、集中力の低下といった精神症状も次々と出現します。
女性ホルモンには善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールや中性脂肪の増加を抑える働きもあります。また、骨代謝の際、必要以上に骨が溶け出さないように作用し、骨量を維持しています。つまり更年期以降は、脂質異常症や動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、骨粗しょう症など高齢期の健康を脅かす疾患のリスクも高まってくるのです。
更年期と加齢のヘルスケア12(1),128-132,2013などを参考に作成