「パリの息子」と讃えられた髙田賢三さん。輝ける人生、 愛するものと暮らす

美意識の結晶。バスティーユに出現した日本家屋と庭園

1986年バスティーユ広場の近くで見つけた一区画に、日本流にいえば約200坪の土地に3階建て（一部4階）の数寄屋造りの家を建築。日本から招いた大勢の職人による「夢の城」の完成には実に7年の歳月を費やした。

パリ・コレクションの常連となり、長く人気デザイナーの第1位に君臨。フランスを代表するデザイナーになっても、日本人のプライドを持ち続け、日本古来のものを深く愛していました。それを象徴するのは、バスティーユに建てた自邸。数寄屋造りの家屋は、日本で一度建てた後解体し、輸送。日本から呼び寄せた十数人の職人が再び組み立てた本格的なものでした。




灯籠や岩、苔に至るまで日本から運ばせた庭は、風にそよぐ竹林や錦鯉の泳ぐ池、春は桜、秋は楓の紅葉が見事で、異国にありながら、本格的な日本を堪能することができた。



1990年、本誌掲載当時の髙田賢三さん。

庭には竹林があり、春は桜、秋は楓の葉が紅葉し、その佇まいは、京都の名旅館に匹敵するほどの趣であるうえに、室内にはプールを設置。長年のコレクションであるアンティークや現代美術品が部屋のあちこちに配され、さまざまなメディアに取り上げられたものでした。



茶室、室内プール、坪庭のある大きなジャグジーがあり、内装はアジアやアフリカのアンティークや現代アート、バスキアの絵画も飾られていた。

このように髙田さんはファッション同様、住まいにも大きな情熱を注いだのです。それは自分自身と大切な人のためであり、訪れた人に幸せな気持ちを味わってもらう心配りでもありました。