3.今後の有望株小池 長井朋子
※21は、これからグローバルに活躍しそうで有望です。
※21 長井朋子(ながいともこ)1982年生まれ。空想の物語の世界であるかのような独特の空間性を持ち、国内外で人気。小山 長井さんは工藤麻紀子さんと似てるようで違うんだよね。長井さんの絵は箱庭的というか、見る側が絵の中の空間に入って遊べるような感じがある。かたや、工藤さんは自然の中の孤独な自分、人間としての存在みたいなものを題材に描いています。
小池 長井さんは没入型で、工藤さんは一歩引いて見る感じですね。
鈴木 言われてみれば、そうだね。僕は有力なギャラリーごとに、注目している若い作家がいます。西村 有
※22、志村信裕
※23、松川朋奈
※24、八重樫ゆい
※25、安井鷹之介
※26、荒神明香
※27、橋爪 彩
※28、近藤亜樹
※29は、今後も追いかけていくつもりです。
八重樫ゆい やえがしゆい(1985-)untitled 2019 キャンバスに油彩 19.3×24.5cm 撮影/岡野 圭 Courtesy of the artist and MISAKO & ROSEN※25 八重樫ゆい(やえがしゆい)1985年生まれ。独自に設定したルールにより、油彩ながら布のような多層的で幾何学的な色面を生み出す。※22 西村 有(にしむらゆう)1982年生まれ。画家の記憶の中の風景に引き込まれる愉悦が味わえるはず。
※23 志村信裕(しむらのぶひろ)1982年生まれ。土地や空間の歴史を捉え、伝える映像が秀逸。
※24 松川朋奈(まつかわともな)1987年生まれ。同世代の女性たちとの対話を通じ、その内面を写実的なスタイルで描く。
※26 安井鷹之介(やすいたかのすけ)1993年生まれ。古典や近代の彫刻を学び、新時代の表現を目指す。
※27 荒神明香(こうじんはるか)1983年生まれ。造花やレンズなどを使って光景を抽象化。現代アート制作チーム「目」でも活躍。
※28 橋爪 彩(はしづめさい)1980年生まれ。卓越した描写力で、西洋名画の翻案に挑戦。
※29 近藤亜樹(こんどうあき)1987年生まれ。力強い絵の深奥に生と死が。小山 僕は今後の有望株としては、三宅信太郎
※30と大宮エリー
※31。文筆家の大宮さんは最近、絵を描くことが仕事の中で比重を占め、ファンも増加中です。
※30 三宅信太郎(みやけしんたろう)1970年生まれ。ドローイング、立体など、多彩な表現言語で細かく描き尽くす画面に、誰もがとりこに。
※31 大宮エリー(おおみやえりー)1975年生まれ。元気でカラフル、わかりやすい絵画の魅力は見る者にストレートに伝わってくる。アートを買うことで見える景色が違ってくる小山 いろいろ挙げたけど、最後に言っておきたいのは、値が上がりそうという理由だけで選ばず、自分が好きなものを買うのが基本だということです。
小池 いくら条件が揃ったものを買っても好きでないと、値下がりした途端、すすめた人を恨みますからね(笑)。
鈴木 アートを買って部屋に飾ることで、それを軸にして他の作品や美術館の見方も変わり、見方が多角的になる。そこがアートを所有することの良さだよね。
小池 そうですね。現代アートに触れることで、あらゆる面で視座が高くなり、それが日常生活にも影響を及ぼし、選ぶものも変わっていく。そういう意味で、アートは自分に対する投資だと私は思っています。
これからのコレクターは単に自分が好きな作家の作品を買い続けるだけでなく、作家が所属するギャラリーが海外のフェアに出展する際にも支援したり美術館に働きかけたりと、総合的に動くことが必要ですね。
小山 そうそう。値上がりを漫然と待つのではなく、仲間に紹介してファンを増やすなど、コレクターからもアクションを起こすことで作家の価値を上げられるのは、アートならではの魅力です。株価と違い、それで結果的に自分の資産価値が上がっても、インサイダー取引にはならないから(笑)。
鈴木芳雄(美術ジャーナリスト)慶應義塾大学法学部政治学科卒業。雑誌『ブルータス』元・副編集長。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。東京都庭園美術館外部評価委員。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』など。さまざまな雑誌やウェブマガジンに寄稿。小山登美夫(ギャラリスト)東京藝術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアートでの勤務を経て、1996年小山登美夫ギャラリーを開廊。同世代アーティストを内外に発信し、日本の現代アートを牽引。日本現代美術商協会(CADAN)代表理事。小池 藍(投資家・大学講師)慶應義塾大学法学部卒業。ベンチャー投資会社「GO FUND, LLP」代表パートナー。京都芸術大学芸術学部専任講師。趣味が高じ、本業の傍ら、現代アートの普及活動に尽力。自らナビゲーターを務めるYouTubeの番組アート専門「MEET YOUR ART」では、毎週おすすめアーティストを紹介中。オンラインで作品も購入できる。 〔特集〕今こそ、教養として知っておきたい アートという資産
撮影/本誌・西山 航 取材・文/大山直美
『家庭画報』2021年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。