2.神戸の駒ヶ林中学校にて吹奏楽クリニック「音楽の楽しさ」を言葉で引き出す
その場その瞬間、目の前の相手の可能性を引き出す
「地元の人に元気になってほしい」。佐渡さんは兵庫県立芸術文化センター芸術監督就任後から、地元中学校を対象にボランティアで吹奏楽指導を続けています。今回訪問した神戸市立駒ヶ林中学校での指導は、2005年1月17日の第1回目以来、4回目。
「避難所だったこの場所で、今こうして音楽が奏でられることが素晴らしいです」。そう挨拶して1時間の指導へ。楽器の奏法やアンサンブルについて助言をすると、音がみるみる良くなっていきます。在校生たちも、生き生きと変化していく吹奏楽部員たちを見守ります。
終了後は生徒たちから質問も。音楽を創るうえで大事にしていることは?との質問には、「人と人が生の音を一緒に創っている素晴らしさを意識すること。眼の前にいるオケこそが、僕にとって世界最高のオーケストラ。その幸福感がまた世界のオケとの幸福な時間にも繫がっている。今日皆と音楽をする時間を持てたことが幸せです」。
その答えは、多感な中学生の心に温かく響いたようです。佐渡さんにとってこの活動は「未来を創ること」。これからもその情熱と祈りは、多くの人に届いていくでしょう。
〔特集〕日本が誇る世界的指揮者に密着 佐渡 裕(YUTAKA SADO)情熱の音楽人生
写真提供/兵庫県立芸術文化センター 撮影/田口葉子 編集協力/三宅 暁 取材・文/菅野恵理子 取材協力/兵庫県立芸術文化センター、兵庫芸術文化センター管弦楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、すみだトリフォニーホール、スーパーキッズ・オーケストラ
『家庭画報』2021年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。