“フェイク”にちなんで、ご自身は騙されやすいほうですか?と尋ねると、「いえ、全然」と一生さん。「子どもの頃から全部疑ってかかるタイプで、うまい話に乗ろうとも思わないので、騙されないです」――『フェイクスピア』では、どんな点がいちばん楽しみですか?「野田さんが描く、ぶっ飛んだ世界を体感できることです。最近の世の中は、作品への許容範囲がどんどん狭まっている気がするんです。日常と地続きのわかりやすい作品は評価してもらえるのに、わかりにくいものは“わからなかった”“つまらなかった”と言われてしまう。よくわからないものに対して最初に生まれる否定の気持ちで止まってしまって、その先を掘っていく人が少なくなってしまったのは、残念なことだなと思います。ぶっ飛んだ世界でも、腑に落ちる何かがあれば成立するものですし、よくわからないものを掘っていくことで、豊かになっていくものがあると僕は思っているので」
――想像力を使おうとしない人が増えているのかもしれません。情報過多の昨今、想像力を使う場も減っていますし。「作り手と観客や視聴者との今のような関係もよくないんだと思います。メイキングというものが生まれたり、SNSでいろいろなことを発信したりすることで、中途半端に裏側がわかる情報を出すものだから、昔のように、作品世界を純粋に楽しめる状況ではなくなってしまった。見せる側と見る側の境界が、曖昧になっているように感じます。しかも今の時代は、嘘がまるで本当のように語られてしまうので、“高橋一生はまだ1日1食らしいよ”なんてことが勝手に独り歩きして、作品を観ながら、“この人、こんなに動くのに1日1食で大丈夫かしら”なんて思う人が出てくるわけです(笑)」
――世の中に渦巻く、そんな“フェイク”もひとつのキーワードになっている本作品。ウィットに富んだ言葉遊びから幾重にも広がっていくイメージの果てに、何が浮かび上がるのか楽しみです。「素敵な作品になると思うので、楽しみにしていてください。僕は思索せずにはいられない人間なので、いろいろなことを考え、想像しながら稽古を重ねて、野田さんが書かれた役をまっとうしたいと思います。こんなご時世ではありますが、ぜひ多くの方に体感していただけたら嬉しいです」
高橋一生/Issey Takahashi
俳優
1980年、東京都出身。テレビドラマ、映画、舞台と幅広く活躍し、2012年の舞台『4 four』の演技での文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞をはじめ、受賞多数。最近の主な出演作は、ドラマ『岸辺露伴は動かない』『天国と地獄~サイコな2人~』、映画『ロマンスドール』『スパイの妻』、舞台『レディエント・バーミン』『天保十二年のシェイクスピア』など。出演映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が2021年6月4日より公開予定。
NODA・MAP 第24回公演『フェイクスピア』
2021年5月24日~7月11日/東京芸術劇場 プレイハウス S席/1万2000円 A席/8500円 サイドシート/5700円(25歳以下は3000円で購入可) 高校生割引/1000円 お問い合わせ/NODA・MAP 電話03-6802-6681
7月15日~25日/大阪・新歌舞伎座 ※6月よりチケット発売
作・演出/野田秀樹
出演/高橋一生、
川平慈英、伊原剛志、前田敦子、村岡希美、
白石加代子、野田秀樹、橋爪 功 ほか
https://www.nodamap.com/fakespeare/