ショーメを語る上でもう一つ、忘れてはならないのが“自然主義”。咲き誇る花や、滴り落ちる雫など、自然界の瞬間の美をジュエリーで描き出す卓越した技と感性は、235年以上に及ぶ歴史の中で築き上げてきた、ショーメの大切な財産になっています。
ピンキッシュホワイトを基調とし、ピンクのオパールカボション、ピンクトルマリン、ピンクサファイア、ダイヤモンドで大輪のアジサイの花を描き出した写真の“オルタンシア”のブローチは、ショーメの自然主義の象徴的なアイテムといえるでしょう。日本の花と思われがちなアジサイ(オルタンシア)ですが、その可憐な美しさはヨーロッパでも古くから愛され、ナポレオン妃ジョゼフィーヌの娘、オルタンスの名前の由来にもなっています。
重なり合う花びらの一つ一つに繊細な表情をもたせた立体感のあるつくり、ピンクトーンでまとめながらも、甘くなりすぎない大人っぽくエレガントなデザイン。コートやジャケット、ワンピースの胸元に飾ればフォーマルで格調高く、ニットや帽子のワンポイントにあしらえばおしゃれにと、母から娘に受け継ぎ、一緒に楽しむことのできるラグジュアリー・ピースです。
構成・文/清水井朋子