きもの姿が似合う八尾町のスポット~その1.桂樹舎
今回は、連載でも度々登場する、きもの姿が映える八尾町のスポットをご紹介させていただきます。
まず、ご案内するのは越中八尾和紙の工房「桂樹舎(けいじゅしゃ)」です。
雪解け水から作る良質な和紙として知られる八尾和紙の歴史は、室町時代にまで遡ります。富山の薬売りが使う薬包紙をはじめ、提灯や障子、和傘といった生活品などに利用されて発展したそうです。
近代化とともに衰退しかけていた地場の和紙に、再び光をあてた人が、昭和初期に桂樹舎を創業した吉田桂介氏。東京の三越百貨店で呉服部に勤務していた後に、柳 宗悦氏の著書『和紙の美』に感銘を受けて、地元で和紙づくりを始めます。その後、染色工芸家の芹沢銈介氏とともに研究して生み出したのが、一つひとつ手仕事で仕上げてられる美しい型染めの和紙です。
縮緬のような和紙のしぼにまで染料が浸透しているため、年月を経ても柄はきれいなまま。使い込むほどに柔らかくなり、艶も出るため私も様々に愛用しています。
工房に併設されている「和紙文庫」には、江戸期以降の和紙の生活品を展示。小学校を移設した建物が、ノスタルジックな雰囲気でゆったりと過ごせます。紀元前のパピルスをはじめ紙の発展の歴史を紹介しているコーナーもあり、時間を忘れて眺めてしまいます。型絵染めによる幾何学的な文様がほっこりと優しい桂樹舎の愛用品。赤いペンケースの柄は、かつて蚕産業で栄えた八尾の町にちなみ、繭がデザインされたもの。桂樹舎で求めたカレンダーがあまりにも素敵で、富山の実家で襖のアクセントとしてアレンジ。