きもの姿が似合う八尾町のスポット~その2.宮田旅館
次にご紹介したいのは、母が生まれ育った江戸後期から続く「宮田旅館」です。
元々は蝋燭(ろうそく)問屋として創業し、生糸問屋を経て、明治4(1871)年に旅館業へと転身。徳川慶喜が大政奉還の後に鷹狩りで八尾を訪れた際は、宮田旅館に宿泊されたそうです。そのほか、歌人の吉井勇をはじめ数々の文豪も逗留していたようです。
かつての土間を彷彿させる入り口を入ると、2階吹き抜けになった囲炉裏の間があります。この地方特有の梁は漆が施されていて、時代を経て黒光りする風情に思わず仰ぎ見るほど。この梁は、江戸期の創業当時のままと聞いています。
この日は、青磁色の手織りの小千谷縮に、団扇を大胆に意匠化した型絵染めの帯を合わせ、街道に面した旅館の玄関先にて夕涼み。今年は中止になりましたが、毎年9月1日~3日に行われる八尾の伝統行事「越中おわら風の盆」の頃は、旅館の前も大勢の人で賑わいます。
宿泊の楽しみは、何と言っても朝ごはん。北前船の寄港地のある富山県は、江戸時代より北海道産の良質な昆布が運ばれてきました。その影響で、今では昆布の消費量が日本で一番! 何を隠そう、私も昆布大使を務めています。味噌汁や卵焼きの出汁から鯛の昆布じめ、ご飯のお供になるおぼろ昆布まで……昆布の旨みがそこかしこに。ぜひ、ご賞味ください。
さて、四季を通して自分らしい「きもの遊び」をお届けしてきた連載も、今月でお開きに。これまでご覧いただきまして、ありがとうございました。
桂樹舎富山県富山市八尾町鏡町668-4
電話 076-455-1184
URL:
https://keijusha.com宮田旅館富山県富山市八尾西町2267
電話 076-455-2011
URL:
https://miyataryokan.com 撮影/岡積千可(人物、取材) 本誌・西山 航(静物) スタイリング/石田節子 着付け/長谷川裕子 ヘア&メイク/光倉カオル 取材・文/樺澤貴子