華やぎの伯爵夫人、レディ・フィオーナ
夏には自ら庭いじりを楽しむレディ・フィオーナ、バラの花のような優雅さが漂う。英国の2月の空気は冷たく、厳しい寒さに心も凍るようです。そんな時は輝く夏の思い出に逃避するのが一番だと思います。
私が第8代カナーヴォン伯爵夫人に初めてお会いしたのも2年前の、木洩れ陽がキラキラと光る夏でした。ハイクレアの丘を、駆け抜ける風にシフォンのスカーフを靡かせながら近づいて来た女性、それがレディ・フィオーナでした。
入り口で待っていた私を見つけるなり、さわやかな笑顔で、「ハロー」と気さくに挨拶してくださいました。ピンクの花が満開に咲いていたのは、ハイクレア城の牧場だったのか、それとも彼女が着ていたワンピースの柄だったか、あの夏の思い出は、今となっては夢の中の出来事だったような気さえします。
伯爵夫人のシンデレラ・ストーリー
2人は友人の館で開かれたディナー・パーティで知り合った。6人姉妹の長女に生まれたレディ・フィオーナは、結婚前は会計士として活躍していたそうです。お話の端々に、彼女がキャリアウーマンだったことが感じられほど、切れ味の良い話術です。
第8代カナーヴォン伯爵と結婚したのは1999年、「まさか伯爵夫人になるとは思いもよらなかった」と、いたずらそうに笑う彼女。結婚18年目の今、「夫と2人で力を合わせハイクレア城の伝統を維持するのが使命です」と、きっぱり語る彼女、シンデレラ・ストーリーとは裏腹に「伝統維持の重さを正面から受け止めること」こそ、彼女が歩んできた道だったのかと思わされました。