誰もが心地よさに包まれるハイクレア城
ドラマのシーンでおなじみ、威厳を放つハイクレア城の正面玄関。 ハイクレア城の外観は一見ゴージャスなバースデーケーキのような構造に見えますが、もともとは箱のようなシンプルな形だったそうです。それを第3代カナーヴォン伯爵が1838年から改造に着手。1878年にようやく現在の姿になりました。
改造プロジェクトの一翼を担ったのは、建築家チャールズ・バリー。英国の国会議事堂建設で有名になった彼は、1838年から1850年の12年間、このプロジェクトに関わりました。そういえば、ハイクレア城と国会議事堂には確かに共通の華やかさがあります。
20年近く住んでいらっしゃるというのに「今もって正確な部屋数はわからない」というレディ・フィオーナ、一部屋一部屋に息吹きを与え優雅な姿に戻すのは大変な仕事です。
「でもダウントン・アビーのロケ地に選ばれたお陰で維持費が確保できたうえ、訪れる観光客も増え、ドラマの映画化も決まりました」と笑顔の彼女は本当に前向きです。
会計士としての才覚はもちろんですが、世紀を経た様々な埃を払い落とし、城を21世紀につなげたのは、何よりも、この快活で温かい彼女のお人柄でしょう。貴族に嫁ぐだけでも大変なのに、伯爵の右腕として互角に活動され、ここまで城を盛り上げてきた彼女は、本当に勇気のある方です。訪れた人々が誰もがくつろげるハイクレア城、これほどに自由な空気が流れる城を私は他に知りません。
●フィオーナ・カナーヴォン伯爵夫人/ロンドン生まれ。6人姉妹の長女。 セント・アンドリューズ大学で英語とドイツ語を専攻、ロンドンで国際会計士として働く。1999年カナーヴォン伯爵と結婚。一人息子エドワードの母。ハイクレアのガイドブックをはじめハイクレア絡みの数々の著書をしたため、歴史家として知られる。趣味は乗馬、読書。オフィシャル・サイトは
https://www.ladycarnarvon.com/次回(2月13日更新予定)はハイクレア城の歴史を振り返ります。ドラマよりもドラマチックなエピソードが満載。お楽しみに。
山形優子フットマン/Yuko Yamagata-footman
フリーライター
上智大学文学部社会学科卒業。カルフォルニア州立大学心理学科でヒューマニスティック・サイコロジーを専攻、修士課程修了(ロータリー財団奨学生)。新聞記者を経てフリーライターに。在英約30年。イギリス人男性と結婚、3人の娘の母。著書に『憧れのイングリッシュガーデンの暮らし』(エディシォンドゥパリ)、『なんでもアリの国イギリス なんでもダメの国ニッポン』(講談社文庫)他。