「大好きな読書、音楽、旅行などを楽しんで、心惹かれる事象には執念深くこだわり抜きたい」
「80代半ばを迎えたこの頃は男性ホルモンが筋力と精神力に働いてくれているみたい」と村崎先生。その探究心、行動力を支える原動力だ。私を私たらしめている、愛すべきパワーの源
人生の友として本、音楽、映画、旅行をこよなく愛する村崎先生。「私を私たらしめる存在に育て上げてくれたもの、またこれからも育ててくれるもの」と想いを語りますが、なかでもその出会いによって救われた本がありました。
厳しかった更年期は女性ホルモン補充療法で乗り越えられましたが、飲み始めて10年が過ぎた頃。骨量には効果があるもののメンタルに作用しにくくなっていると感じていました。
「70歳くらいのときには特に原因もないのに、いや、それが鬱の特徴でもありますが、かなりひどい鬱になってしまったのです」。
その頃、手にしたのが井上ひさしさんの戯曲『頭痛 肩こり 樋口一葉』。なぜ若き一葉が、頭痛や肩こりなどの更年期障害に似た症状に悩まされたのか。一葉の日記を買い求め、月経らしき表現と頭痛や肩こりとの関連を推理し、読み解くことを試みました。
「さらに、一葉さんの日記に出会えたのもご縁に違いないと、日記と同じ日に同じ道を歩く覚悟を決めたのです」。
本郷、上野、吉原。一葉がなかなかの健脚でついて歩くのは大変でしたが、次第に苦ではなくなり、1年足らずの行脚で鬱も消えていきました。
「更年期であれ、老年期であれ、よりよく生きたいときに発症する“鬱”は本当に辛い。元気に活躍したいのに心や体がいうことを聞いてくれないのですから。ホルモン補充も効果がないし、あの頃が人生でいちばん怖かった。一葉さんに本当に助けられました」