実は星座占いにも精通している伊藤先生。松岡さんが同じ蠍座生まれで相性がいいと知るや、「よかった!」と打ち解けた表情に。撮影では揃って元気よく歩いてくださいました。(松岡さん)スーツ、シャツ、ネクタイ、靴/紳士服コナカ慶應義塾大学医学部教授 同百寿総合研究センター副センター長 伊藤 裕先生
伊藤 裕先生(いとう・ひろし)1957年京都府生まれ。京都大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。ハーバード大学医学部博士研究員などを経て、現在は慶應義塾大学医学部教授、同百寿総合研究センター副センター長。専門は内分泌学、高血圧、糖尿病、抗加齢医学。世界で初めて「メタボリックドミノ(生活習慣病がドミノ倒しのように進み、重大な病態を引き起こす連鎖)」という概念を発表。『幸福寿命 ホルモンと腸内細菌が導く100年人生』など著書多数。最新作は『いい肥満、悪い肥満』。どうしたら幸せな百寿者になれますか?── 松岡さん
「わくわく感のある毎日を送っている人は幸福に長く生きられます」── 伊藤先生
松岡 この連載は健康がテーマで、僕のためにあるような企画なんです。僕は「もっとも健康だと思うタレント・有名人」の1位に選ばれたこともあるのですが、自分の健康をそこまで信用できていないので。
伊藤 そんなことはないでしょう。見た感じで、その人の健康状態はかなりわかります。50過ぎでこの肌艶はびっくりですよ。10歳は若く見えます。
松岡 ありがとうございます。実は健康に関する本を読んだりして、正しい知識を学ぼうとしています。いきなりですが、お酒はダメでしょうか。多くの本にノーと書かれていますが。
伊藤 これには議論がありますが、僕はたしなむ程度ならいいと思っています。もちろん飲みすぎはよくありませんが、少しなら血液の循環がよくなる、善玉コレステロールが増えるといういい面もありますし、誰かとコミュニケーションを取るときには、ちょっとお酒があるといいものですしね。
松岡 少しほっとしました。
「絶対」という医者はどこかで思考が止まっている
伊藤 医療もAIやビッグデータの活用などにより、だいぶ変わりました。以前はA、B2種類の薬剤で臨床試験をしてAのほうが結果がいいと、一律で「この病気にはAの薬」となっていました。でも今は「一般的にはAの薬がいいけれど、この人にはBが合いそうだから、Bを処方してみよう」といった、こまやかな対応ができるようになってきました。もし「絶対」という医者がいたら、どこかの段階で思考が止まっているからで、そういう医者にはかからないほうがいいと思いますよ。
松岡 なるほど、「絶対」という言葉は要注意ですね。こまやかな対応はありがたいですが、先生がたはその人をより深く知る必要がありますね。
伊藤 はい。特に我々が専門とする肥満や高血圧、糖尿病といった病気は、食生活や運動習慣などを詳しく聞く必要があるのですが、一人一人にそれを徹底するのはかなり大変です。うちの教室員には、自分の親だったらどうするかと考えて、親身に診察にあたるよういっています。
松岡 確かに、家族に置きかえたら、真剣に考えられますね。
伊藤 僕が最近気になるのは「肥満は悪。食べすぎはいかん」という世間の風潮です。中年の場合は気をつけるべきですが、高齢者はサルコぺニア(加齢による筋肉の減少)のほうが問題なので、しっかり食べたほうがいい。年を取ったら少し太っているくらいのほうが長生きできるんですよ。
松岡 肥満も年齢に応じて捉え方を変えるべきなんですね。
伊藤 ええ。もう一つ、僕が今非常に心配しているのが、先進国のなかで突出している日本女性のやせすぎです。最大の問題はやせたお母さんから生まれた子どもの多くが2500グラム以下の低出生体重児で、大人になるとメタボになってしまうことです。
松岡 え!? それは意外です。
伊藤 低出生体重児のほうが将来肥満や糖尿病、心筋梗塞になる確率が高いのです。また、うつ病などにも関係している可能性も示され、産婦人科の先生は「お母さんをやせさせてはいけない」と躍起になっています。