ヨシタケシンスケさんの『このあとどうしちゃおう』(ブロンズ新社)。「天国で、おじいちゃんが先立ったおばあちゃんの元へ駆け寄っていく再会はまさに私の願い」。血を吐くような痛みも少しずつかさぶたになる。穴は残るけれど
時に涙ぐみながら、晃さんとの微笑ましいエピソードを話してくださった都さんですが、亡くなって1年ぐらいは涙が溢れてとても口にできなかったといいます。
「2020年3月に定年退職して少し余裕ができてから、幸せな結婚生活に思いを馳せることができるようになったんです。ノートを見るたびに涙していましたが、愛されていたんだな私、とも思えるようになりました。宝物です。最初は、不在の絶望が、喪失が勝つんです。でも永遠に大切な存在を失わない人なんて誰もいない。それが人生。That’s life.。今、血を吐くような苦しい思いをされているかたに、いつかかさぶたになる日が来ます、とお伝えしたい。心に穴は残るけれど......」。
茨木のり子さん『歳月』(上・花神社)と永田和宏さんの『午後の庭』(KADOKAWA)。パートナーに先立たれた作者の思いが心に沁みる作品。2年前、都さんは信頼する仲間たちと一緒に、NPO法人日本がんサバイバーシップネットワークを立ち上げました。目指すのは、がんの影響を受けるすべての人が集い、つながり、生きる喜びを感じ、自らの力を蓄えられるような交流の場。
「いつか、天国で晃さんと再会したときになんと声をかけたいですか?」とお聞きすると、「そばに駆け寄って『私、頑張ったんだから』と言うと思います」と都さん。
晃さんが書き記した言葉の力が、今日もこれからも都さんを支え、生きる力を与えてくれるはずです。
撮影/鍋島徳恭 構成・取材・文/小松庸子
『家庭画報』2022年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。