4.人間ドックを過信せず、自覚症状があるときはすみやかに受診する
「人間ドックで異常なしの判定が出たから大丈夫」と油断するのは禁物です。人間ドックでは幅広く検査を行いますが、全身の健康状態をくまなく調べているわけではありません。病巣が体の奥深くにあったり、ほかの臓器の陰に隠れていたりして見つけられないこともあります。
また、検査結果はその時点での健康状態を示したものに過ぎず、人間ドックの受診後に病気を発症することもあります。特に増殖スピードの速いがんは年に1回の人間ドックでは早期発見が難しいといわれます。
本田先生は「人間ドックの限界を知り、過信しないことが上手な受け方の一つであり、健康を保つ秘訣のように思います」といいます。
さらに、自覚症状があっても検査データとして表れないこともあります。そのため、人間ドックで異常なしの判定が出ても自覚症状があるときは何か月も放置せず、すみやかに医療機関を受診して医師の診察や必要な検査を受けることが大切です。このことは肝に銘じておきましょう。
また、腹部超音波検査や胸部レントゲン検査といった画像検査では腫瘍のような怪しいものが映ることも少なくなく、もやもやとした気持ちになります。
1つの検査結果だけでは病気を断定できないことが多いので、異常が見つかっても追加検査や精密検査を行ったり、画像の変化を比較するために経過観察したりするわけですが、結果が出るまでの期間は心配の種を抱え続けることになります。これは人間ドックを受けるうえでのデメリットといえるでしょう。
「医師は安心していただくために状況や見通しを正しく伝えられるよう努めていますが、不安に思うことがあれば医師に聞いてください」と本田先生はアドバイスします。過信せず、慌てず。人間ドックを上手に受けるための極意です。
賢くつきあうために心得ておきたいこと
●幅広く検査してくれるが、全身の健康状態を確認しているわけではない
●自覚症状があっても検査データとして表れないこともある
●検査結果はその時点での健康状態を示したものでしかない
●1つの検査結果だけでは病気を断定できないことも多い
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人間ドックの結果を過信せず、自覚症状があるときはすぐに受診
〔豆知識〕
線虫がん検査は早期発見に役立つ?
現在用いられている腫瘍マーカーよりも、より偽陽性や偽陰性の少ない腫瘍マーカーが探し求められています。尿中のがんの匂いを識別する線虫がん検査もそのような探索の中から生まれたものです。
このような新しい手法による腫瘍マーカーも従来の腫瘍マーカーと同様、偽陽性や偽陰性の問題を避けて通ることができません。
新しい手法による腫瘍マーカー検査を受けることを検討する際には、がんの人を対象にした偽陽性、偽陰性のデータではなく、一般の人を対象にした偽陽性、偽陰性のデータを確認し、自分にとって価値のあるものかどうかを判断することをおすすめします。
取材・文 渡辺千鶴 撮影 田中 雅、柳原久子、本誌・大見謝星斗、伏見早織 イラスト 岡部哲郎
『家庭画報』2022年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。