学生時代はバスケットボールに打ち込み、現在は畑仕事と散策が趣味という辻先生。毎日運動を欠かさない松岡さん同様、階段を上るステップが軽やかでした。「意味づけに気づいて不きげんの海から脱出しましょう!」── 辻先生
松岡 ごきげんの価値に気づいたら、次は何をすればいいですか?
辻 禅の言葉にある「今、ここ、自分」を意識することです。変えられない過去にとらわれたり、見えない未来を憂えたり、人と比べて落ち込んだりしていると、どんどん不きげんになっていきます。世の中には、自分の心がつくった不きげんの海で溺れている人がいっぱいいます。
松岡 不きげんの海! 脱出するにはどうすればいいでしょう?
辻 自分の「意味づけ」が不きげんをつくっていると認識することです。よく皆さん「雨で憂鬱」といいますが、実際は水が降っているだけ。“憂鬱な雨”なんてものはありません。また、忙しい忙しいといってイライラしている人がいますが、予定がたくさん入っているだけのことです。
松岡 では、意味をつけないほうがいいんですか?
辻 それが、人間は意味をつけずにはいられないものなんですよ。ポイントは、意味づけしている自分に気づいて、「これは自分が勝手につけた意味だな」と俯瞰することです。無理にポジティブに考えるのとは違って、自然体になれます。そこでまた「今、ここ、自分」に集中することで、きげんがよくなっていく。意味づけに振り回されず、自分のきげんは自分で取る、ということですね。
松岡 「雨で嬉しい!」と自分にいい聞かせる必要はないのですね。
辻 はい。そういうことを続けていると疲れますからね。僕は自然体が楽でいいと思っています。
松岡 では、「ごきげんでいるために笑顔でいましょう!」という意味づけはどうでしょう?
辻 笑顔でいたほうが自分の気分がいいとわかっているならオーケー、「笑わなきゃ」だったらダメですね。
松岡 なるほど。
辻 表情や態度、言葉は心を形づくる大事なツールで、重要なのは「自分がごきげんになるか」。私は口に出すと気分がよくなる「ごきげんワード」を100個くらい持っていますよ。
松岡 100個も!
好きなことを考え、話すと誰でも気分がよくなります
松岡 ほかにはどんなことをすればごきげんになれるでしょうか?
辻 ごきげんワードの話につながりますが、好きなことを考えること、話すことです。修造さん、好きな食べ物は何ですか?
松岡 ご飯です。
辻 好きな色は?
松岡 オレンジ。
辻 好きな季節は?
松岡 夏。
辻 どうでしょう? 「好き」には正解不正解がないので、自由に楽しく話せますよね。好きなことを考えると脳からα波が出て、リラックスすることもわかっています。
松岡 では、実際に好きなものを食べるのもいいことですか?
辻 いいことではありますが、行動しなければならないので、思考で完結する僕のメソッドからは外れます。
松岡 え! 外れるんですか。
辻 食べるにはお金も時間もかかりますよね? でも、「考える、話す」はかからないし、基本的に時間や場所の制約もない。コロナ禍で食べに行けなくてもストレスは溜まりません。