デビュー当初は地元・福岡を離れたくなかったそうだが、16歳で単身上京。「俳優として頑張ろうと腹をくくりました。家族も“ダメだったら帰ってきてもいいのよ”とは言ってくれませんでしたし(笑)」――中村さんが演じるのは、佐賀の紳士服量販店で働く光代と恋に落ち、自らが犯した罪を打ち明ける祐一。そこから2人の逃避行が始まります。祐一についてはどう感じていますか?
「子供の頃にすごく辛い経験をしたこともあって、自分の思いを話せる人、受け入れてくれる人をずっと探していたんだと思います。光代さんのほうも、自分の居場所を探していた。多くの人には愛されなかった2人だけれども、お互いに出会い、わかり合える存在が1人でもできてよかった。だからこそ祐一は、その人のために自ら進んで“悪人”になれたんだろうなと。でもきっと、観る人それぞれが違うものを感じられるのが、この作品。僕は、そこがとても好きです。僕達の仕事は、お客さんに答えを提示することよりも、どう思いますか?と疑問を投げかけることなのかなと思っているので。もちろん作品にもよりますけれども、自分の根っことしては、そうありたいと思っています」
――演じる役によって全く違う顔を見せる中村さん。俳優になってよかったなと感じるのは、どんな時でしょう?
「前は、そんなことを感じる余裕もなかったんですが(笑)、作品ごとに違う役ができることに楽しさを感じるようになってからは、俳優をやってよかったなと思うようになりました。役を通して自分も考え方が変わったりするし、ちょっとずつではありますけれども、人として大きく成長していけるような気がしています。色々な人の人生を経験させてもらう中で、そういう自分の変化を少しでも感じることができた時は、やっぱり嬉しいですね」
――では、舞台はどういう存在ですか?
「自分の引き出しの少なさとか、役者としての力の無さみたいなものを、痛いほど感じさせられる場所です。中身が空っぽのままだと、絶対に立てない。僕は自分に嘘がつけなくて、役としての気持ちに少しでも嘘があると違和感が生まれて、気持ち悪くなってしまうんです。舞台では、それが観ている人にもあからさまに伝わってしまう。感情のままに動いたりするのは楽しいんですけれども、そういうところが怖いです。でも、そこまで感じられる場所って、すごく大事だなと思います」
2015年秋の連続ドラマ『無痛~診える眼~』では、頭髪と眉を剃り落して先天性無痛症と無毛症を持つ難役を務め、話題を呼んだ。