衣装協力:ドレス52万4700円/ERDEM(MAISON DIXSEPT) リング10万5600円/CHARLOTTE CHESNAIS(EDSTROM OFFICE)“自分”を知ることで得た気づきと充実感
宮沢さんが舞台作品に出演するときに大切にしていることは何か。
「稽古に向けて自分のプランをはっきりと計画するタイプではないのですが、台詞をしっかり入れていくようにはしています。そうすれば肉体も心もできるだけ自由でいられるので、演出家がいったこと、相手役の人に起こったことなどをしっかり受け止めて、互いにキャッチボールをして内から生まれるものを大事にしたいと思っています。
現場に携わっている人たちが考えていることや思っていることが私の心に響いて、自分ひとりで考えているよりも、もっと高く飛べるような気がするんです。相手から得るものや感じることが大事だと思うようになりました」
作品と真摯に向き合う思いが伝わってくる。多忙ななか、オンであれ、オフであれ、自分の時間はあるのだろうか。
「平野啓一郎さんの『私とは何か─「個人」から「分人」へ』という本を読んだときに、すごく腑に落ちました。演じているときの私と普段の私は違うんだというふうに思っていたけれど、人にはいろんな面があるのだと。仕事場にいるときの自分、家にいてひとりでいるときの自分、親と接するときの自分、子どもと接するときの自分。人がそれぞれに対して接したときに“自分”が変わるのは当たり前のことで、たった一つの“本当の自分”なんて存在しないと書かれていたんです。
演じている面も、演じていない面も、それは私でない別の人間ではなくて、すべて私の中にある一面なのだと思うと、芝居をしている時間も自分にとってとてもリアルなものになりました。演じているときには、台本にある役の思いを言葉として発することで“生きている”ということをすごく実感できるんです。芝居をすることが自分を消費するだけだとは思いません。むしろ本番が始まる前に疲れたと思っていたのに終演後に元気になっていることがあるんです。舞台でも、家でも達成感を感じるので、自分が過ごしているどんなときにも充実していると思えるようになりました」
役を演じるときを線引きするのではなく、どんな瞬間も“自分”だと語る宮沢さん。社交界の華であり、“初めての恋”をするアンナを演じることで、さらに新しい一面を見せてくれることだろう。
宮沢りえ(みやざわ・りえ)
1973年生まれ。11歳でモデルデビューし、1988年公開の初主演映画『ぼくらの七日間戦争』で日本アカデミー賞新人賞を受賞。以後、テレビ、映画、舞台など、多方面で活躍。5度にわたる日本アカデミー賞主演女優賞や読売演劇大賞・最優秀主演女優賞など、数多くの映画、演劇の賞を受賞。近年の出演作には舞台『泥人魚』、映画『決戦は日曜日』、テレビドラマ『女系家族』、『鎌倉殿の13人』などがある。
COCOON PRODUCTION 2023
DISCOVER WORLD THEATRE vol.13
『アンナ・カレーニナ』
ロシアを代表する文豪のトルストイの長編小説『アンナ・カレーニナ』をイギリスの気鋭の演出家であるフィリップ・ブリーンが新解釈で戯曲化した作品。
アンナ、ヴロンスキー、カレーニンの三角関係を主に描くことが多い本作をフィリップ版では、破滅に向かうアンナの“愛”と未来への希望を感じさせるリョーヴィンとキティの“純愛”を対照的に描く。ロシア文学の金字塔ともいわれる大作にある19世紀後半のロシア貴族社会の人間模様が、ブリーンの演出でどのように現代に甦るのか。
出演は宮沢りえ、浅香航大、渡邊圭祐、土居志央梨、大空ゆうひ、梅沢昌代、梶原 善、小日向文世ほか。
森ノ宮ピロティホール2023年3月25日〜27日
S席1万1000円(全席指定)ほか
キョードーインフォメーション:0570(200)888(11時〜18時、日曜・祝日休)
表示価格はすべて税込みです。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/千吉良恵子〈cheek one〉 スタイリング/ギブソン三浦真紀子
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。