5.現役引退発表会見とインスタライブから見える、新しい旅への期待!
そして、公演2日後にご案内をいただき、5月2日の現役引退発表会見に伺ったわけです。正直にいえば、稀代のパフォーマーである高橋選手、そして世界とも勝負できる高いスケーティングスキルと優雅な演技で観客を惹きつける村元選手のカップルが大会で輝く姿をもっと見ていたかった気持ちはあります。結成してからわずか3シーズン目で、アイスダンスの世界において世界選手権11位になるということがどれほど偉大な業績か。
「まったく迷うことなく、私も現役を引退すると伝えました。大ちゃん以上に最高のパートナーはいないですし、『せっかくここまで成長できたし、これからも一緒に作品を作っていきたい』と大ちゃんからも言ってもらえたので」と語った村元さん。「これからはアイスダンスのパートナーでもあり、ソロのパフォーマンスではライバルにもなる」と高橋さんは笑って語っていたが、これからどのような新しい旅へ誘ってくれるのか、期待しかない。会場を出る瞬間まで、誠実で礼儀正しいお二人だった。会見からの帰り道、2014年に行われた高橋選手の1回目の引退会見に立ち会うべく、岡山へ向かった日のことをしみじみと思い出していました。
今回の会見でご自身でも「シングル時代1回目の引退は、怪我の影響で、さいたまスーパーアリーナで行われる世界選手権に出られないままやめることになって。引退前の2年は痛みで思うような演技ができず、自信もなくし、スッキリしない気持ちを引きずっていた。でも、今回は次にやりたいことが明確にたくさんある。とても前向きな気持ちでの引退です」と心からの笑顔で引退の変遷を語ってくれましたが、確かに14年の会見とは比較にならないほど達成感に溢れ、希望と自信に満ちた高橋選手がそこにいました。
もう現役選手として大会での高橋選手を見ることは2度となく、そして、引退後の原稿では高橋「さん」、村元「さん」表記になる。そう思うといくばくかの寂寥感は拭えませんが、会見での内容に加え、5月2日の夜お二人で行ったインスタライブから次のステージへの期待が膨らんできたのも事実です。
「記憶に残る演技をしたいという思いがブレずにあった。世界選手権と国別対抗戦での『オペラ座の怪人』は、自分のスケート人生に残る作品になったと思う。これからも大ちゃんと一緒に2人で、そして1人でも見せていきたい」と村元さんが語れば、「筋トレを続けて50歳までこの体はキープするつもり。せっかくここまで仕上げたのに、落とすなんてあり得ない。1回目の引退のときはそんなこと思わなかった」と笑う高橋さん。
「ニコライ(・モロゾフ)に振り付けしてもらってもいいし、パスカーレ(・カメレンゴ)にタンゴとか作ってもらえたらかっこいいよね。アイスダンサーだらけのアイスショーも本当にやりたい!」とビジョンを熱く語る高橋さんの姿を見て、「そのジェットコースターロード、振り落とされないようにずっとついていきます!」と皆さん、思われたはず。
お二人が現役引退を発表してから初めてのアイスショーとなる「アイスエクスプロージョン福岡公演」(23年5月12日から14日まで)では、どのような爆発が起きるのか。今後さらに進化&深化し、世界を拡げて活躍していくであろう村元さん、高橋さん。これからのお二人の飛躍がますます楽しみです。
小松庸子/Yoko Komatsu
フリー編集者・ライター。世界文化社在籍時は「家庭画報」読み物&特別テーマ班副編集長としてフィギュアスケート特集などを担当。フリー転身後もフィギュアスケートや将棋、俳優、体操などのジャンルで、人物アプローチの特集を企画、取材している。
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