クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第190回 C・P・E・バッハ『ヴュルテンベルク・ソナタ』
イラスト/なめきみほ
父の偉業を後世に伝えた偉大な息子
今日3月8日は、C・P・E・バッハ(1714~88)の誕生日です。
J・S・バッハ(ヨハン・セバスティアン・バッハ)と最初の妻マリア・バルバラとの間に授かった次男にして、「ベルリンのバッハ」「ハンブルクのバッハ」と呼ばれて愛されたC・P・E・バッハ(カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ)は、プロイセンのフリードリヒ2世の宮廷チェンバリストを務めた後、ハンブルクに移って同市のカントルや教会の音楽監督を務めます。
生前は父よりも有名で、その音楽はハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンにまで大きな影響を与えます。さらには、父の偉大さを伝えることに務めた功績も大きく、今に至るバッハ神話を作り上げた中心人物といえそうです。
クラヴィコードの巨匠であったC・P・E・バッハは、200曲近いクラヴィーア作品を残しています。その代表作が『ヴュルテンベルク・ソナタ』と呼ばれる6曲のクラヴィーア・ソナタです。旋律の美しさと親しみやすさに主眼を置いた彼の音楽は、今後更に再評価が進むことでしょう。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。