近視をはじめ遠視や乱視を矯正する方法は眼鏡やコンタクトレンズだけではありません。「裸眼ライフ」で快適な日々を満喫できる、最新の視力矯正治療の情報をお届けします。
各治療法を解説してくださる先生方
南青山アイクリニック 理事長・院長 戸田郁子先生
1986年筑波大学卒業。97年に眼科専門医による国内初の視力矯正手術専門施設を開設。実力と実績を兼備する先駆者。
みなとみらいアイクリニック 理事長 荒井宏幸先生 1990年防衛医科大学校卒業。米国でレーシック手術を学び、 国内への導入・普及、 指導者として後進の育成に尽力する。
名古屋アイクリニック 院長 中村友昭先生 1988年宮崎医科大学卒業。国内有数の視力矯正手術件数を有し、リレックススマイルの先駆者としても知られる。
みはら眼科 理事長 三原研一先生 1992年高知医科大学卒業。視力矯正以外にも高度な眼科治療に取り組み、年間の手術実績は1000件以上を誇る。
4つの視力矯正治療から最適な方法が選べる時代に
視力低下の原因で多いのが網膜にピントがうまく合わせられなくなることによる近視、遠視、乱視です。これらの状態を矯正する一般的な方法は眼鏡やコンタクトレンズの装用です。美容面からコンタクトレンズを使う女性は多いものの、異物感や充血などでレンズを装用するのがつらくなり、仕方なく眼鏡に切り替える人も少なくありません。
このように視力矯正の方法が限定されてしまった人たちに新たに提案したいのが最新技術により選択肢が広がっている「視力矯正治療」です。
その治療法の1つはレーシックに代表される「レーザー視力矯正手術」です。治療機器が進化し角膜への負担がより少ないリレックススマイルという新治療も開発されています。2つめは目の中にレンズを入れて視力を回復する「眼内レンズ挿入術」です。日本ではICLという方法が主流で、近年は選択する人が急増しています。3つめは矯正用レンズを装用し角膜の形状を変えることで視力を回復する「オルソケラトロジー」です。手術をせずに視力を回復したい人には注目の治療法です。
なお、これらの治療は外来で行われ、自費診療になります。視力矯正治療には複数の選択肢があり、これらを組み合わせる治療もある今、裸眼での生活を取り戻して毎日を快適に過ごすのは夢ではないのです。
この分野の第一人者の先生方によると視力矯正治療の対象年齢に上限はないそうです。「もう若くないから」と年齢を理由にあきらめることはありません。
一方で治療に対する適応は診療ガイドラインなどで定められていて本人が希望しても受けられないことがあります。裸眼ライフを満喫するにはライフスタイルだけでなく自分の目の状態に応じた最適な方法を選択することが肝心です。眼鏡やコンタクトレンズ以外の視力矯正の最新治療法をよく知り、専門施設に相談することからその一歩を踏み出してみませんか。
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「レーシック」
角膜の形を変える視力矯正手術の標準
1990年代に臨床応用されたレーシックは長期データで治療精度、効果、安全性、安定性が証明されており、レーザー視力矯正手術のスタンダードとして世界中で普及しています。近視の場合、軽度から中等度が治療の適応になります。
この治療はフェムトセカンドレーザーで角膜に円形の切れ目を入れて「フラップ」と呼ばれる蓋を作ったうえで(図1)、角膜の一部をエキシマレーザーで削り(図2)、近視や遠視、乱視の度数を調整します。手術時間は両眼で約15分です。現代の手術はコンピューター制御下で行われるため、精密で安全性の高い矯正が可能です。
一方、角膜を削ると元に戻せないデメリットもあります。そのため、過矯正にならないよう複数回の測定で適正な度数を決めることが大切です。(解説/三原研一先生)
【図1 レーシックの手術法】角膜表面にフラップを作成。
【図2 手術後の角膜断面 (近視の場合)】エキシマレーザーで角膜を削るため、 手術後は角膜の形状が平坦化する。
こんな人におすすめ
・裸眼で遠くが見える生活をしたい人
・仕事やスポーツで眼鏡やコンタクトレンズを使用しにくい人
・眼内手術に抵抗がある人など
治療の特徴1 長期データがあり、治療の精度、効果、安全性、安定性において優れている。
2 フラップの保護により痛みが少なく、視力回復が早い。
3 近視に加え、遠視や乱視の矯正もできる。
4 白内障や緑内障がある場合は慎重に適応を検討する。
手術費の目安 両眼 33万円
※
「リレックススマイル」
角膜への負担がより少ない視力矯正手術
リレックススマイルは、第3世代のレーザー視力矯正手術として2010年代から広まっている新しい治療法です。国内では十数か所の眼科施設が取り組んでいます。近視の場合、軽度から中等度が治療の適応になります。
この治療はフェムトセカンドレーザーで角膜の中に切れ目を入れ「レンチクル(近視や乱視の度数で片の厚さや形が変わる)」を作成します。このレンチクルを角膜の小さな切開創から抜き取り視力を矯正します(図3)。
手術時間は両眼で約
20分です。レーシックと違い、フラップを作成しないので角膜強度が保たれ、打撲や外傷に強いのが特徴です。傷口が小さ
く、角膜知覚神経へのダメージが少ないことからドライアイになりにくいのも利点です。(解説/中村友昭先生)
【図3 リレックス スマイルの手術法】角膜表面に入れた約2~3㎜ の切開創からレンチクル(角膜片)を引き抜く。
【図4 手術後の角膜断面】フェムトセカンドレーザーで角膜の中に切れ目を入れるため、手術後も角膜前面は残る。
こんな人におすすめ
・目を打撲する可能性がある人(格闘技、ラグビーなどのスポーツ、消防士などの危険を伴う職業)
・ドライアイが強い人など
治療の特徴1 角膜の切開幅が小さいので痛みがさらに少ない。
2 矯正精度が高くクリアな視界を得られる。
3 フラップを作成しないため、術後にフラップがずれる心配がなく、物理的な衝撃にも強い。
4 レーシックに比べて視力の回復は遅いが、安定性は変わらない。
手術費の目安 両眼 37万4000円
※
「ICL(眼内コンタクトレンズ)」
目の中にレンズを入れて視力を回復
ICLは、目の中に挿入して視力を矯正するレンズの一種です。治療は、薄くて柔らかい素材でできているICLを小さく丸めて角膜を3ミリほど切開した部分から目の中に挿入し、後房と呼ばれる場所に留置します(図5)。
手術時間は両眼で約30分です。異物感もなく、裸眼と同じ感覚で視力矯正が可能です。また、術後にレンズの手入れや交換も原則必要ありません。
ICLは角膜が薄い、強度の近視や軽度の円錐角膜があるなどの理由からレーシック不適応の目に対する治療法として広まりました。しかし、近年は角膜を削らないのでレーシックよりも見え方の質がよい、ドライアイが起こりにくい、レンズを取り出せば元の状態に戻せるといった利点が注目され、ICLを選択する人が急増しています。
白内障が始まる50代以降はICLではなく、濁った水晶体を取り、多焦点眼内レンズを入れて視力を矯正したほうが老眼にも対策できます。(解説/荒井宏幸先生)
【図5 手術後の眼内断面】ICLは目の中の後房(虹彩と水晶体の間) に留置する。
こんな人におすすめ
・角膜が薄い、強度近視、軽度の円錐角膜の人
・重度のドライアイの人など
治療の特徴1 レーシックが不適応の人も裸眼で生活できるようになる。
2 角膜を削らないため、中等度以上の近視ではレーシックよりも見え方の質がよい。
3 レンズを取り出せば 元の状態に戻せる。
4 目の中の手術になるので眼内炎など合併症のリスクがある。
手術費の目安 両眼 82万円~
※
「オルソケラトロジー」
就寝中のレンズ装用で角膜の形状を矯正
オルソケラトロジーは就寝中に特殊な形状をしたコンタクトレンズを装用することで角膜前面の形状を矯正し、日中の裸眼視力を改善する治療法です(図6)。適応は軽度から中等度の近視や乱視です。強度近視や角膜乱視に対応できるレンズも開発中で適応範囲はさらに広がると予測されています。
また、近年注目されているのが近視進行抑制効果です。特に低濃度アトロピン点眼薬との併用療法の効果が高いことがわかっています。
2017年には日本眼科学会がオルソケラトロジーのガイドラインを改定し、20歳未満に治療適応を拡大したので、子どもにも行えます。(解説/戸田郁子先生)
【図6 視力矯正の仕組み】網膜の手前でピントが合う近視の状態。
【図6 視力矯正の仕組み】オルソケラトロジーレンズの装用により角膜前面の形 状が変化し、ピントが網膜上に移動する。
【図6 視力矯正の仕組み】レンズを外しても角膜前面の形状が変化している間は 網膜上でピントが合い、裸眼で過ごせる。
こんな人におすすめ
・手術を受けずに視力を回復させたい人
・軽度~中等度の近視、乱視の人
・近視の進行をできるだけ抑えたい人
・手術ができない小児~20歳未満の人 など
治療の特徴
1 日中はコンタクトレンズや眼鏡を装用せずに裸眼で過ごせる。
2 近視進行抑制効果の可能性がある。
3 視力の回復・安定に日数がかかることがある。
4 コンタクトレンズと同様のリスクがあるので自宅でのケアや定期検査が必須。
治療費の目安 両眼 20万円※
※解説者が在籍する眼科施設の費用。自費診療のため、眼科施設により金額は異なる。