クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第245回 ガーシュウィン オペラ『ポーギーとベス』より「サマータイム」
イラスト/なめきみほ
ジャンルを超えて愛される超人気曲
今日5月2日は、日本で初めてサマータイム(夏時間)が実施された日です。
1948年4月28日に公布・施行された「夏時刻法」に基づいて実施されたサマータイムでしたが、1952年4月11日に廃止されています。その理由は“実情に合わなかった”とされていますが、ここ数年の猛暑をみる限り、再施行しても良いように思えます。
さてクラシックにおける「サマータイム」といえば、20世紀アメリカを代表する作曲家ガーシュウィン(1898~1937)のオペラ『ポーギーとベス』の中の有名なアリアを思い出します。
ガーシュウィンが亡くなる2年前の1935年に作曲されたこのオペラは、1920年代のアメリカ南部に住む貧しい黒人の生活を描いた名作です。その音楽には、ジャズや黒人音楽のティストが盛り込まれ、登場人物は、ごく一部の白人を除けば、すべて黒人という個性的な作品です。
オペラの第1幕冒頭で歌われる「サマータイム」は、現在までになんと2000を超えるカバーが生み出された名曲中の名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。