クラシックソムリエが語る「名曲物語365」 難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。記事の最後では楽曲を試聴することができます。
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第242回 モーツァルト オペラ『フィガロの結婚』
イラスト/なめきみほ
モーツァルトの幸福感が溢れ出る傑作
今日4月29日は、モーツァルト(1756~91)が、オペラ『フィガロの結婚』を完成させた日です。
フランスの劇作家ボーマルシェの戯曲を題材にして書かれたこのオペラの正式名称は、『狂おしき一日、あるいはフィガロの結婚』。このタイトルは、世界最大級のクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」の名前の由来にもなっています。
1786年にウィーンのブルク劇場で行われた初演は大成功。その後プラハでも爆発的な人気を呼び、それがオペラ『ドン・ジョヴァンニ』を依頼されるきっかけとなったのですから素敵です。まさに、モーツァルトが最も幸福な時期の作品だといえそうです。作品の冒頭を飾る幸福感に満ち溢れた序曲は、モーツァルトの作品の中でも最も有名な曲の1つでしょう。
さらには、1994年の映画『ショーシャンクの空に』の中で、主人公が刑務所の館内放送で流す「手紙の二重唱」の美しさには意表を突かれます。まるで時間が止まったかのように音楽に聴き入る受刑者の姿からは、音楽の持つ不思議な力が感じられます。
田中 泰/Yasushi Tanaka一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。